« 福岡戦~わだかまりのある引き分け | トップページ | ルヴァンカップ奈良クラブ~弾みのつく大勝 »

2024年4月21日 (日)

札幌戦~決定力不足によるドロー

2024年4月20日 コンサドーレ札幌 vs サンフレッチェ広島 札幌ドーム


 その寒さはやはり本州とは違った。乾燥した空気が冷気を伴って降りてくる。そこに身を切り刻むような寒さを感じながらもドームに入ると一安心する。今更ながら北海道に屋内のスタジアムがあることにありがたさを感じるのだった。

 たださすがにアウェイゴール裏は人が少ない。その中でも塊り声を張り上げるサポーター。だがさすがに札幌の応援と被ると多勢に無勢、声がかき消されてしまうのだった。

 そんな中でのアウェイ戦。前節同様のメンバーに右サイドには新井を入れてきた。ベテランならではの安定感を求めたのだろう。ところがこの新井からサンフレッチェは破綻をきたしたのだった。

 どことなく主導権を握ったような滑り出しが災いしたのか、どこかヌルッとした入りだった。その弛緩した空気が安直なパスを生んだ。右サイド新井は縦を切られると中央へと緩いパスを送ると完全に相手へのプレゼントパスとなり逆襲を受ける。右サイドを抉られ中央のスパチョークへと出され真正面からのシュート。中野が脚を投げ出しブロックするとそれがリフレクションとなりフワリと上がる。GK大迫も間に合わずそのままゴールに吸い込まれてしまった。失点。呆気ない、呆気ない失点となってしまった。

 中途半端なブロックならしない方がGK大迫も対応できたかもしれない。だが大きかったのは新井のパスミスだった。特に相手のプレスが掛かってるような厳しい場面でもないのに完全に相手の足下へ流したパスが全ての起点となる。今回スタメンで起用されたのはベテランならではの安定感を念頭に入れたものだろう。だがその新井が明らかに相手の攻撃の起点を与えてしまった。加入最初の試合では強烈なインパクトを残したもののそれ以後パッとしない。まさかあれだけで終わってしまったのだろうか。

 パッとしないといえば前線の攻撃陣にも当て嵌まる場面が訪れる。1点を追う中ボール奪取から中央を切り裂くカウンターの場面。加藤が抜け出し持ち上がる。そして射程を捉えるとシュート。完全に決まったかと思った場面、見事にファーサイドに外れていった。それには皆顔を覆い天を仰ぐ。そして極め付けは混戦から抜け出し完全にGLとの1対1の場面。飛び出すGK菅野にぶち当てた。その跳ね返りを押し込むもこれも防がれた。裏に出るまでは秀逸なのに最後の最後が決めきれない。加藤のシュートはどうしても入らないのだった。

 それでも決めるにはシュートの場面をつくるしかない。前線からのプレスを強め高い相手の自由を奪うことによって主導権を握る。チーム全体前掛かりになる。競り合いでは体を張り球際でも粘りを見せる。それによりショートパスをつなぎゴール前に出てシュート。が、入らない。枠にいかない。そして行ったら行ったでGKの真正面。札幌がたった1本のシュートを決めるのに対して恐ろしいまでの決定力のなさだった。

 追う展開のまま後半。予想通り右サイドは新井に代えて越道が入った。与えられたチャンスを生かそうと運動量を上げる越道。右サイドを打開できない。サンフレッチェのパスは全て読まれてる。裏に出しても付いてくる。縦への突破は閉じられてる。仕方なしに上げたアーリークロスは何の脅威を与えることもなく弾き飛ばされる。もはやこういった場合セットプレーしかない。ただ競り勝てはするものの枠に飛ばすことができないので期待感は薄い中満田のCK。やはりヒットできずルーズボールが行き交う。が、それをボックス内へ打ち込むことができるとその落としから中野。グラウンダーのシュートをゴールの隅に入れたのだった。

 決まった、決まった、決まった。同点。あれだけ前線の選手が決めれず喘いでいるのに決めたのはDFの中野だった。助かった。本当に助かった。これで振り出しに戻すことができた。

 ここから怒涛の攻撃が続く。右に左にボールが行き交い最後の砦を崩さんと虎視眈々と狙っている。そしてボックスにできたポケットにボールが入ると松本泰志が飛び込みシュート。ゴールを目の前にしたシュート。距離にして数メートル。誰もが決まったと思ったその瞬間、ボールは無常にもポストに弾き返ってしまったのだった。

 ああ、泰志。どうして泰志のシュートはここまで入らないのか。怪我人の影響で出場できてる今のうちにポジションを不動のものとしたい。その為の絶好のアピールであるシュートをことごとく外すのである。よい動きはしても決められない。泰志のプレーにはいつもそんなもどかしさを感じるのだった。

 そしてそれ以上にもどかしかったのは満田である。加藤との2シャドーというポジションにいながらまるでアタッキングのシーンが見られない。川村の負傷交代のせいでボランチに下がったというのもあるだろうがアタッカーとしての恐さがなくなった。そしてそれ以上に恐さがなかったのは川村に代わって入った小原だった。

 左サイドで受けてもそこから勝負する訳でもなくただパスを回すのみ。売りであるはずのドリブルをまるで見せることなく終始無難なプレーばかりこなすことで相手に余裕を与えている。極め付けは大橋が単独で右から潜り込んでクロスを放った時である。ゴール真正面にいたにも関わらずボールにヒットさせることができなかった。れろれろれろと浮かんだボールにGK菅野は欠伸でもできるくらいの余裕を持ってキャッチすることができるのだった。

 その後運動量の落ちたサンフレッチェは次第にプレスが効かなくなり逆に押し込まれるようになる。相手のクロスボールに小原が手を掛け倒した場面はよもやPKと思いきや笛が鳴らずホッとした。もはや跳ね返すのが精一杯。あれだけあった勢いは完全に相手に持っていかれた。それだけに決めるべき時に決めないといけないといいのを痛感してしまうのだった。

 前線の大橋を狙ったロングボール。上手く競り合いの中から収めたと思ったらファールの判定。そうなるともはや引いて守るサンフレッチェには押し上げの目処が立たない。でも勝ちたい。チャンスをつくりたい。そんな模索を続ける中、無常にも終了のホイッスルがなってしまったのだった。

 勝てた試合だった。失点してから尻に火がついたがあれを最初からやってほしい。そして完全にこちらの攻撃パターンを読んでる相手に対して違いをつくることができなかった。小原はその為のピースであったが全くインパクトを残すことができなかった。そして最も大きいのは決定力不足。決まってもおかしくない場面で全部外してしまう。点を入れなきゃ勝てないルールの中でこれでは勝つことはできない。

 外国人選手がみんな怪我をしてる中で前線では大橋以外不発。その大橋もマークが厳しくいい状態でシュートが打てない。そして一番試合でシュートを決めてる中野がCBという悲運。どうしてここまで噛み合わないのだろうか。

 決まらない、決まらないサンフレッチェ。シュートを打っても打っても入らない。サンフレッチェに来た選手はどうしてこんなにシュートが入らなくなるのかもはやこれはミステリーであった。答えに辿り着かないミステリー。一体誰がこの壁を突き破ってくれるのだろうか。

« 福岡戦~わだかまりのある引き分け | トップページ | ルヴァンカップ奈良クラブ~弾みのつく大勝 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 福岡戦~わだかまりのある引き分け | トップページ | ルヴァンカップ奈良クラブ~弾みのつく大勝 »

最近のトラックバック

2024年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
無料ブログはココログ

サンフレッチェの魂~リンク集

  • Flashscore
    世界の様々なスポーツ試合速報を、リアルタイムで発信しているサイト
  • SANFRECCE Diary
    このブログを読んでる人ならすでに知ってるだろうから今更リンクを貼るのが恥ずかしい気もする。 何せこのサイト1997年から毎日更新してるというのが凄い。 過去の記事などはぼくも参考にさせてもらうことも多い。 継続は力なりというが実際には継続するのに力がいる。 そういう意味でも管理人のせと☆ひできさんは偉大である。
  • ススボウブログ
    自分サッカーやグルメについてのブログということです。 かなり熱心に応援してる方のようです。
  • ひろしま日記&サンフレッチェコーナー
    試合を時系列で紹介したりかなり凝った内容となってます。 現地の様子など行った人でしか分からないことがあり興味深いです。 試合に行った人も行けなかった人も楽しめるのではないでしょうか。
  • ゆみしん徒然の書
    ゆみしんさんのブログ。本当に色んなスタジアムに観戦に出かけて現地の様子をレポートしてます。観戦者視点でそれぞれのスタジアムの様子が分かり現地に行く時の参考になりそうです。
  • Scud Sanfrecce
    MICRAさんのサイト。ここの特集のコーナーは必見。サンフレッチェはなぜ人気がないかという考察については今までに見ない観点がある。是非一度読んでください。
  • ヒロシマ・コーリング
    今そこにある危機。サンフレッチェにはメディアが少ない。その為妙にぬるい記事が目立つ。そんな甘い現状にこのまま放置していいのかという危機感を感じた時発言していく。

ぼくのミュージック・ライフ

  • Songs Remains the Same
    Led Zeppelin: 聖なる館
    数あるレッド・ツェッペリンの名曲の中でもこれが特に好き。この曲はダブルネック・ギターがあったからこそできたような曲でこういう変則的なギターを使いこなしてるという意味でもジミー・ペイジは凄い。ロックの歴史の中で数々のギターを使ったギタリストはいたがこうしてちゃんと曲のクオリティーを保った形で生かした例というのは他にないのではないだろうか。だからぼくはレッド・ツェッペリンのライブではこの曲が一番聴きたい。そういう意味でDVD、CD含めてライブの音源が一枚しかないというのは勿体無い。だからツェッペリンの海賊版はやたらと高いんだろう。 (★★★★★)
  • モータウン・ジャンク
    Manic Street Preachers: ジェネレーション・テロリスト
     ぼくはこの曲を聴いた時はぶっ飛んでしまった。パンクのエモーショナルな躍動感がありそれでいてヴォーカルの高い声。パンクとは一線を引いてるようでその情熱はパンクだった。ハードロックとも言えないその曲調はこのバンドの大きな特徴だった。  元々このバンド、2枚組みのアルバムを出して解散すると豪語してたが結局15年経った今でも活動している。しかもCDは当時より売れて作品の評価も高くなってる。同時期に出たバンドがまるで残ってないことからすると相当に快挙である。それについて本人達ももっともらしいコメントを出すがそれがいかにも洗練されてる。パンク的でありながら教養のある人達だというのが分かる。そのどうしようもなくハチャメチャでありそうでいながら実はごくマトモな人達というギャップが親近感を呼んでる。だからこのバンドの曲は歌詞までジックリと読んでしまう。  しかし、この人達の作品は結構多く全部網羅するのは骨が折れる。この音楽へのバイタリティ、これだけは間違いなく本物だということだ。 (★★★★★)
  • ルイ・ルイ
    Johnny Thunders: New Rose Collection
     ジョニー・サンダースの死後に出たライブ音源とアコースティック・ギターによるスタジオ録音を音源に編集したアルバム。その中でもこの曲とDo You Love Meは圧巻だった。ラジカセで録ったような音源であるが、それが逆に臨場感を出している。分かる人にしか分からないという作品だ。  ちなみに現在このCDが売ってるのかどうか知らない。これだけセンスのある人がこんなカルト的な存在で終わってしまったのは理不尽な気がする。だからこそ好きな人にはよりたまらない存在になってしまうのだ。 (★★★★)
  • ロクサーヌ
    Police: ロクサーヌ
     これが売春婦に関する歌だと知ったのはずっと後のこと。歌詞も分からずずっとこの曲を聴いていた。勿論歌詞を知ってからもこの曲は大好きな曲だけど。  本当かどうか知らないけどこの曲の入ってるファースト・アルバムはわざと下手に演奏したらしい。理由は当時パンク・ニュー・ウェーブのブームの中でスタイルを合わせたということだろう。そしてセカンド・アルバムでは実力に見合った演奏で上手くなったと思わせたらしい。そういわれてみるとファーストでは音数が少ないシンプルな曲が多いような気がする。このバンド、5作しかアルバムがないのだがそういう抜け目なさというのは元から持ってたようだ。5作とも素晴らしく駄作のないバンドだった。 (★★★★★)

ぼくのブック・ライフ

  • トニー・サンチェス: 悪魔を憐れむ歌
    ローリング・ストーンズの暴露本である。現在は改題され『夜をぶっとばせ』になってるがタイトルといいブックカバーといい前の方がシックリしていた。 ストーンズというのはぼくが最も影響を受けたバンドの内の一つだが、ここまで無茶苦茶をやってそしてそれが逆に彼らのダークなイメージにつながった。まさにロック・バンドの典型である。どんなに悪ぶっても彼らのようにはなれないし彼らのような影響力は出せないだろう。 時代をロックと女とクスリと共に駆け巡り気付けば巨大産業に飲み込まれていったストーンズ。作者はそんなストーンズに最後は身も心もすり減らされてしまったらしい。それでも未だに活動しているストーンズはある意味怪物だ。 ぼくとしてはこの本の訳者中江昌彦の翻訳もその場に居合わせたような感覚になるのが良かった。他にも『レス・ダン・ゼロ』などもいい雰囲気を出してた。今まで本なんか読んだこともなかったぼくが高校生の時読んで凄いショックを受けたのをよく覚えてる。当時のブックカバーの最後に「END]という文字が書かれてたが読後その文字が見た目以上に大きく見えたものだ。 (★★★★★)
  • 落合信彦: 第四帝国
     まず最初に断っておこう。これはトンデモ本である。ここに書かれてる内容は根も葉もないことと言っていい。そもそもこの落合信彦という人がゴースト・ライターを使ってマトモに取材してるかどうか怪しい。本人いわくCIAに100人も友人がいるというから情報には事欠かないということらしいがこれではアメリカ政府のトップシークレットがなぜか来るというUFO研究者と言ってることが変わらない。そういえばUFOに関しての記述もこの本ではありオリジナルな展開を見せてるのは興味深かった。  内容はナチス・ドイツの残党が世界各地で暗躍してるというものでヒトラーは生きてる、UFOは実はナチスが造ったというファンタジーが溢れてる。その展開はちょっとしたSFといっていい。  事の真実なんてどうでもいい。ただ単純にエンターテイメントとして読めば何の問題もないだろう。誰も「ゴルゴ13」を読んで事実と違うと言わないだろう。それと同じことだ。  しかしこの人、いかにも事実というように書くのが上手い。文章も簡単でスラスラと読めるので展開のテンポがいいのである。だから知らないうちに読んでしまってるという感じになる。そのスタイルはぼくもずいぶんと参考にさせてもらった。  まあ実際はゴースト・ライターなんだが。 (★★★)
  • ニック・ホーンビィ: ぼくのプレミア・ライフ
     このブログの元ネタとなった本。この本との出合いはサンフレッチェの応援仲間に渡されたことだ。その存在は知ってたものの読む機会がなかったのでありがたかった。  内容はというとアーセナルを応援する著者のその観戦生活といったとこだがこれを読むと結構日本のサポーターもプレミアのサポーターも変わらないとこがあるのがわかる。退屈な、退屈なアーセナルというタイトルには笑ってしまった。なぜなら分かり過ぎるくらい分かる心情だからだ。ぼくもサンフレッチェを応援してて何度同じことを感じただろう。  今やアーセナルはプレミア・リーグでも優勝しチャンピオンズ・リーグでも決勝に進出するような存在。一方ぼくの応援するサンフレッチェ広島はJリーグの1部リーグで常に降格の危機を感じるクラブ。でもその根っこは同じである。海外サッカー好きにはJリーグをバカにする傾向があるがそういう人には分からない内容かもしれない。 (★★★★★)

JリーグPR

  • Jリーグ2010特命PR部員 Miles