« 神戸戦~リベンジを果たした勝利 | トップページ | セレッソ戦~崩れなかった均衡 »

2023年10月 1日 (日)

名古屋戦〜采配が的中した逆転勝利

2023年9月30日 サンフレッチェ広島 vs 名古屋グランパス エディオンスタジアム広島


 雨上がりにより濡れたピッチが照明の光の反射を受け、夜空とのコンストラストが神秘的だった。そんな中での選手紹介。名古屋にはサンフレッチェから移籍した稲垣、野上、森島が揃って名前を連ねていた。因縁の対決。だがそれ以上に存在感を放つのが長谷川監督だった。この監督はなぜかサンフレッチェの障害となる。どこのチームに移っても大きな壁として立ちはだかるのだった。

 上位の成績で終わりたい故に勝ち点3がほしい。その為のスタメンは前節と同じ。無得点で終わった前節の借りを返したい。前線のピエロス、マルコスはスタートから高い位置でのプレッシャーを続けるのだった。

 それにより名古屋の押し上げを阻止していた。低い位置でのボール回しにプレッシャーをかけ続ける。が、テクニックのある名古屋の選手は個で裏返すと前線へ一気に当ててくる。が、最終ラインがクリア。相手の攻撃を食い止めることにより再び前を向くことができるのだった。

 そこまでは上手くいってる。が、名古屋のDFはゴール前へ鍵を掛けるのも速い。更にカウンターの場面が訪れるもトップのピエロスのプレーがいつも中途半端になることでフェードアウトしてしまうのだった。打てばいいとこを打たない。前線のポストプレーではボールを収めきれない。そして左サイドから志知がクロスを入れたとしてもターゲットとして機能してない。ああ、ピエロス。絶対的エースになると思ってた期待はもはや幻想なのだろうか。だがそんな嘆きを感じてた時、サイドを抜け出しシュート。逆サイドへ入れる。飛び上がるサポーター。が、オフサイドの旗が上がってしまう。ああ、惜しい。だがオフサイドとはいえシュートまで辿り着いたのは希望でもあった。

 そしてシュートシーンはもう一度訪れる。最終ラインでターンしてシュート。決まった。今度こそ決まったと思いきやこれもオフサイド。それならばと川村が遠目からのミドル。が、これもバーをぶち当て跳ね返る。あともう少しのとこで決めきれない。だが今度はこぼれ球をミドル。直線的なボールがゴールに突き刺さる。決まった。これは文句ない。と思ってたらまたしても副審の旗が上がってる。オフサイド。どうやらピエロスが出てたようだ。ああ、ピエロス。せめて味かたのシュートは邪魔しないでくれと嘆くのだった。

 一進一退。どちらも譲り合わない展開でありながらもどちらかというとサンフレッチェの方に有利に傾いてる。その為か、ハーフタイムを挟んでもメンバー交代はなかった。その一方名古屋は代えてきた。前田、森島に代えて永井、内田である。永井、これが厄介だった。スピードを使って一気に窮地に追い込んでくる。攻めれば攻める程守備を固め奪ってからのカウンターが効きやすい。嫌な予感がした。そしてその嫌な予感は具現化されるのだった。

 固く閉ざされた守備ブロックに絡め取られるとロングボールで一発を狙われる。だが競合いでは荒木が全てクリアしてしまう。ところが生半可足元に入ったボールだったが為に一瞬処理が乱れた。それを見逃さなかったユンカー。ボールを掻っ攫うとそのままゴールまで一直線。荒木が追走するも身体を入れられた。GK大迫が飛び出す。するとそれを見越したループシュート。ふわりと浮いたボールがゴールへと落ちていく。実にゆっくりとした弾道。それを無情にも眺めるしかできないのだった。

 失点。なんと落ち着いた対応。ユンカー。またしてもユンカーである。この選手にはいつもやられる。どんなにマークについてようが一瞬の動きできめてしまうことに気が遠くなってしまうのだった。

 もはやこの試合は決まったかもしれない。同点にすべく前がかりに出るものの完全に名古屋にとって都合のいい展開になっている。そこを打開すべくメンバー交代。ピエロス、マルコスに代わってヴィエイラ、エゼキエウである。ピエロスはともかくマルコスは受けて捌いてのプレーができる為勿体無い気がした。が、エゼキエウは単独でボールを持ち上がるプレーを見せ、ヴィエイラはポストプレーで前線を活性化する。それにより名古屋の守備の城壁が揺らぎ始めた。ただそれでも決壊さすまでにいかない。そこで交代を告げたのは中野、志知の両ウィングだった。

 確かに両翼が突破できなくなっていた。クロスが上がらなくなっていた。それでも守備で破綻させることはなかっただけに安定はしていた。代わって入った越道と東、これは博打的でもあるのだった。

 すると早速右サイド越道にボールが入る。マークに着かれる。凍りついたような間があった。が、一瞬にしてギアを上げ抜け切る前にクロス。ゴール前へ勢いのあるボールがスワーブ。そこへ飛び込んだのが加藤。脚を伸ばして当てるとゴールネットに刺さった。今度こそオフサイドもない。

 決まった、決まった、決まった。同点。越道ファーストタッチでアシスト決めてしまった。そしてそこに合わせた加藤。正に電光石火のような鋭さだった。

 盛り上がりスタジアム。応援のコールが一層熱を帯びる。この機に畳み掛けたい。名古屋も点をとりに来た。その分スペースが空きオープンな展開になる。左サイドでのショートパスがこ気味よく回る。それによりヴィエイラが抜け出した。完全に打てる。その時倒れた。後ろから捕まれてしまったのだった。

「ファールだろ!」

 誰もがそう叫んだ次の瞬間主審からPKのサイン。そこに色めき立つ。蹴るのはヴィエイラ。いつも左に蹴るがGKランゲラックは読んでるだろうか。そしてスタートのホイッスル。間を置いた助走。蹴った瞬間ランゲラックは左に飛んだ。が、ボールが飛んだのは右。見事逆を突いて逆転に成功したのだった。

 ドワーッと揺れるスタジアム。ヴィエイラのチャントが鳴り響く。勝てる、勝てる。あとは耐えればいい。だがダメ押し点を決めたい。そして勝ちを確固たるものとしたい。そんな熱気に包まれ勢いはますますヒートアップするのだった。

 右サイドにボールが渡る。迷うことなく縦へ抜けクロスを上げた越道。ゴール前を横切るボール。逆サイドから加藤が打つもブロック。ルーズボールが飛ぶとエゼキエウの頭。GLランゲラックも間に合わず入ったのだった。

 追加点。2点差。勝利に向かって大きく大きく前進。左右に振れた中で最後のフィニッフュは正に稲妻だった。技術がありながらどこか結果が残せないでいたエゼキエウ。ここで決めた追加点は非常に貴重なゴールでもあるのだった。

 交代による采配が全部当たった。だがそれはスターティングメンバーがそこまでの布石を打っていたものでもあった。長谷川監督の上を行けた。それは岩壁を突き破ったかのような爽快感がある。このまま試合を終え3-1での逆転勝利。前半オフサイドにより何度もゴールを取り消され味方のミスによる失点。そこから盛り返したこの勝利。それぞれの選手が持ち味を出しそれぞれが結果を出す。そんないい循環をシーズンを通して観たかったもののせめて残り試合だけでも爪痕を残して欲しい。少しでも上の順位。曖昧な目標ながらもそこに想いを馳せながらも幸福感に酔いしれるのだった。

« 神戸戦~リベンジを果たした勝利 | トップページ | セレッソ戦~崩れなかった均衡 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 神戸戦~リベンジを果たした勝利 | トップページ | セレッソ戦~崩れなかった均衡 »

最近のトラックバック

2023年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
無料ブログはココログ

サンフレッチェの魂~リンク集

  • Flashscore
    世界の様々なスポーツ試合速報を、リアルタイムで発信しているサイト
  • SANFRECCE Diary
    このブログを読んでる人ならすでに知ってるだろうから今更リンクを貼るのが恥ずかしい気もする。 何せこのサイト1997年から毎日更新してるというのが凄い。 過去の記事などはぼくも参考にさせてもらうことも多い。 継続は力なりというが実際には継続するのに力がいる。 そういう意味でも管理人のせと☆ひできさんは偉大である。
  • ススボウブログ
    自分サッカーやグルメについてのブログということです。 かなり熱心に応援してる方のようです。
  • ひろしま日記&サンフレッチェコーナー
    試合を時系列で紹介したりかなり凝った内容となってます。 現地の様子など行った人でしか分からないことがあり興味深いです。 試合に行った人も行けなかった人も楽しめるのではないでしょうか。
  • ゆみしん徒然の書
    ゆみしんさんのブログ。本当に色んなスタジアムに観戦に出かけて現地の様子をレポートしてます。観戦者視点でそれぞれのスタジアムの様子が分かり現地に行く時の参考になりそうです。
  • Scud Sanfrecce
    MICRAさんのサイト。ここの特集のコーナーは必見。サンフレッチェはなぜ人気がないかという考察については今までに見ない観点がある。是非一度読んでください。
  • ヒロシマ・コーリング
    今そこにある危機。サンフレッチェにはメディアが少ない。その為妙にぬるい記事が目立つ。そんな甘い現状にこのまま放置していいのかという危機感を感じた時発言していく。

ぼくのミュージック・ライフ

  • Songs Remains the Same
    Led Zeppelin: 聖なる館
    数あるレッド・ツェッペリンの名曲の中でもこれが特に好き。この曲はダブルネック・ギターがあったからこそできたような曲でこういう変則的なギターを使いこなしてるという意味でもジミー・ペイジは凄い。ロックの歴史の中で数々のギターを使ったギタリストはいたがこうしてちゃんと曲のクオリティーを保った形で生かした例というのは他にないのではないだろうか。だからぼくはレッド・ツェッペリンのライブではこの曲が一番聴きたい。そういう意味でDVD、CD含めてライブの音源が一枚しかないというのは勿体無い。だからツェッペリンの海賊版はやたらと高いんだろう。 (★★★★★)
  • モータウン・ジャンク
    Manic Street Preachers: ジェネレーション・テロリスト
     ぼくはこの曲を聴いた時はぶっ飛んでしまった。パンクのエモーショナルな躍動感がありそれでいてヴォーカルの高い声。パンクとは一線を引いてるようでその情熱はパンクだった。ハードロックとも言えないその曲調はこのバンドの大きな特徴だった。  元々このバンド、2枚組みのアルバムを出して解散すると豪語してたが結局15年経った今でも活動している。しかもCDは当時より売れて作品の評価も高くなってる。同時期に出たバンドがまるで残ってないことからすると相当に快挙である。それについて本人達ももっともらしいコメントを出すがそれがいかにも洗練されてる。パンク的でありながら教養のある人達だというのが分かる。そのどうしようもなくハチャメチャでありそうでいながら実はごくマトモな人達というギャップが親近感を呼んでる。だからこのバンドの曲は歌詞までジックリと読んでしまう。  しかし、この人達の作品は結構多く全部網羅するのは骨が折れる。この音楽へのバイタリティ、これだけは間違いなく本物だということだ。 (★★★★★)
  • ルイ・ルイ
    Johnny Thunders: New Rose Collection
     ジョニー・サンダースの死後に出たライブ音源とアコースティック・ギターによるスタジオ録音を音源に編集したアルバム。その中でもこの曲とDo You Love Meは圧巻だった。ラジカセで録ったような音源であるが、それが逆に臨場感を出している。分かる人にしか分からないという作品だ。  ちなみに現在このCDが売ってるのかどうか知らない。これだけセンスのある人がこんなカルト的な存在で終わってしまったのは理不尽な気がする。だからこそ好きな人にはよりたまらない存在になってしまうのだ。 (★★★★)
  • ロクサーヌ
    Police: ロクサーヌ
     これが売春婦に関する歌だと知ったのはずっと後のこと。歌詞も分からずずっとこの曲を聴いていた。勿論歌詞を知ってからもこの曲は大好きな曲だけど。  本当かどうか知らないけどこの曲の入ってるファースト・アルバムはわざと下手に演奏したらしい。理由は当時パンク・ニュー・ウェーブのブームの中でスタイルを合わせたということだろう。そしてセカンド・アルバムでは実力に見合った演奏で上手くなったと思わせたらしい。そういわれてみるとファーストでは音数が少ないシンプルな曲が多いような気がする。このバンド、5作しかアルバムがないのだがそういう抜け目なさというのは元から持ってたようだ。5作とも素晴らしく駄作のないバンドだった。 (★★★★★)

ぼくのブック・ライフ

  • トニー・サンチェス: 悪魔を憐れむ歌
    ローリング・ストーンズの暴露本である。現在は改題され『夜をぶっとばせ』になってるがタイトルといいブックカバーといい前の方がシックリしていた。 ストーンズというのはぼくが最も影響を受けたバンドの内の一つだが、ここまで無茶苦茶をやってそしてそれが逆に彼らのダークなイメージにつながった。まさにロック・バンドの典型である。どんなに悪ぶっても彼らのようにはなれないし彼らのような影響力は出せないだろう。 時代をロックと女とクスリと共に駆け巡り気付けば巨大産業に飲み込まれていったストーンズ。作者はそんなストーンズに最後は身も心もすり減らされてしまったらしい。それでも未だに活動しているストーンズはある意味怪物だ。 ぼくとしてはこの本の訳者中江昌彦の翻訳もその場に居合わせたような感覚になるのが良かった。他にも『レス・ダン・ゼロ』などもいい雰囲気を出してた。今まで本なんか読んだこともなかったぼくが高校生の時読んで凄いショックを受けたのをよく覚えてる。当時のブックカバーの最後に「END]という文字が書かれてたが読後その文字が見た目以上に大きく見えたものだ。 (★★★★★)
  • 落合信彦: 第四帝国
     まず最初に断っておこう。これはトンデモ本である。ここに書かれてる内容は根も葉もないことと言っていい。そもそもこの落合信彦という人がゴースト・ライターを使ってマトモに取材してるかどうか怪しい。本人いわくCIAに100人も友人がいるというから情報には事欠かないということらしいがこれではアメリカ政府のトップシークレットがなぜか来るというUFO研究者と言ってることが変わらない。そういえばUFOに関しての記述もこの本ではありオリジナルな展開を見せてるのは興味深かった。  内容はナチス・ドイツの残党が世界各地で暗躍してるというものでヒトラーは生きてる、UFOは実はナチスが造ったというファンタジーが溢れてる。その展開はちょっとしたSFといっていい。  事の真実なんてどうでもいい。ただ単純にエンターテイメントとして読めば何の問題もないだろう。誰も「ゴルゴ13」を読んで事実と違うと言わないだろう。それと同じことだ。  しかしこの人、いかにも事実というように書くのが上手い。文章も簡単でスラスラと読めるので展開のテンポがいいのである。だから知らないうちに読んでしまってるという感じになる。そのスタイルはぼくもずいぶんと参考にさせてもらった。  まあ実際はゴースト・ライターなんだが。 (★★★)
  • ニック・ホーンビィ: ぼくのプレミア・ライフ
     このブログの元ネタとなった本。この本との出合いはサンフレッチェの応援仲間に渡されたことだ。その存在は知ってたものの読む機会がなかったのでありがたかった。  内容はというとアーセナルを応援する著者のその観戦生活といったとこだがこれを読むと結構日本のサポーターもプレミアのサポーターも変わらないとこがあるのがわかる。退屈な、退屈なアーセナルというタイトルには笑ってしまった。なぜなら分かり過ぎるくらい分かる心情だからだ。ぼくもサンフレッチェを応援してて何度同じことを感じただろう。  今やアーセナルはプレミア・リーグでも優勝しチャンピオンズ・リーグでも決勝に進出するような存在。一方ぼくの応援するサンフレッチェ広島はJリーグの1部リーグで常に降格の危機を感じるクラブ。でもその根っこは同じである。海外サッカー好きにはJリーグをバカにする傾向があるがそういう人には分からない内容かもしれない。 (★★★★★)

JリーグPR

  • Jリーグ2010特命PR部員 Miles