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2014年8月31日 (日)

徳島戦~笑顔のない勝利

2014/08/30 徳島ヴォルティスvsサンフレッチェ広島 鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアム

「皆川選ばれるかな」
 日本代表の発表があった時、子供が言った。だがちっとも勝てなくなってしまったチームからとても選ばれると思わなかった。そしてそれ以上にシーズン後半になってようやく試合に出れるようになった大卒ルーキーにそんな話があるとは到底思えなかったがメンバー発表のリストには皆川の名前がしっかりと入ってた。
 選ばれた。信じられなかった。前監督のザッケローニが試合に出てようと出てまいとヨーロッパのクラブに所属する選手を優先する人だっただけにこれは驚きだった。だが選ばれることに対しては全く不思議はない。今や前線での皆川のキープは攻撃への押し上げには欠かせない要素になってるのだった。
 そんなことがあった為に当然のことながら皆川の活躍を期待してしまう。相手は最下位の徳島であるがここにきて調子を上げてきた。そして得点力不足のチームにおいてむしろ皆川にはすがるような想いもあるのだった。
 ところが試合序盤早速シュートを打たれてしまった。そこで肝を冷やしまたしても相手が主導権を握る試合になるのかと思いきや段々とサンフレッチェのボール支配率が多くなる。するとミキッチのクロスを皆川が落とし浩司のボレーシシュート、外れる。再度ミキッチのクロスから浩司のヘッド、外れる。そしてペナルティエリアの中で皆川、高萩と絡んで最後に浩司がシュート、これも外れる。放たれるシュートのことごとくを浩司は枠に入れられないのだった。
 得点力不足。そんな言葉が頭に浮かんだ。だがそんな浩司に再びクロスが入る。一旦は競るもルーズボールとなりそのボールを取ろうと柴崎が足を高く上げた。が、この時笛が鳴る。ああ、柴崎のファールかと思ったが何と、徳島のディフェンダーの手に当たったということでPKの判定だった。うお、これは運が良かった。スロー再生により確かに手に当たってるのだった。
 だがこれを誰が蹴るか。浩司だろうか。ただこの日あれだけシュートを外してる浩司にPKを決めれるイメージがなかった。一体誰が蹴るのだろうとじっと見守ってるとペナルティスポットに立ってるのは皆川なのだった。
 前線でその屈強な身体を利用してボールを納める皆川のプレーからはとてもPKのキッカーというイメージが沸かなかった。どこかコースを狙って速いシュートを打つのだろう。主審の笛が鳴る。短い助走から皆川が蹴る。GKは横に飛んだ。が、放たれたシュートはそれとは逆方向に転がって入ったのだった。
 先制。その結果に喜ぶも皆川がああいった駆け引きができるというのがたのもしかった。PKという形であったが注目されてる時にちゃんと結果を残すことができたというのがまた嬉しいのだった。
 これで更に追い打ちをかけたいサンフレッチェだった。今度は中央の密集地から裏へ抜け出すボールが出る。それに反応したのは柏。必死に戻る徳島の選手。だが一歩柏が早くシュートを決め追加点となった。
 飛び上がって喜んだ。流れからのゴールっていつ以来だろうと思ってたその矢先、笛が鳴った。何と、副審がオフサイドの旗を上げてるのである。
 「ええっ!」と叫ぶ。スロー再生映像が流れるとどこがどうオフサイドなのかわからず解説者も言葉を濁してた。
 その失望感は深かった。でもまだチャンスはつくれると気を取り直すも今度は徳島の攻撃が続くのだった。そして攻撃をくい止めてもマイボールをあっさり奪われて守備に廻らなければいけなくなる。ポゼッション型のチームと言われながらもちっともポゼッションできない。ほとんどの時間自陣に引いて守って守って守るだけになる。それでいて追加点への希望をまだ捨てきれないのだから始末が悪い。
 結局そのまま終了のホイッスルが吹かれサンフレッチェは勝つことができた。一応は勝ったようである。だけどその瞬間の選手の表情からは笑みがこぼれてなかった。それが表すようにちっとも勝った気分がしないのである。もしかしたら相手も負けた気分がしないのではなかろうか。
 そういえばこんな気分もかつてよく味わったような気がする。勝ったにも関わらず「今日勝ったんだよね」とお互いに確認しあうような。でもあの時はJ2だった。それを思えば勝てばいいという時期はあるのだろう。だけどつい半年前に見れた魅惑的な攻撃がちっとも見れなくなったのなぜなんだろう。

2014年8月28日 (木)

水戸戦~文字だけで勝利を知る

2014/08/27 天皇杯3回戦 サンフレッチェ広島vs水戸ホーリーホック エディオンスタジアム広島

 土砂災害の為に延期された試合だった。一体今シーズンは何試合天災による延期が行われただろう。広島に自然災害というのはどうもイメージとして結びつかずあれだけ土砂で家屋が押し流された映像が流れつつもまだどこかで信じられないものがあるのだった。
 他の試合より1週間遅れて開催されたこの試合、サンフレッチェはメンバーを9人替えて臨んできた。言い換えてみればサブメンバー中心。だがそのサブメンバーの中に寿人の名前もあった。絶対的エースであるはずの寿人のこういった形での起用というのはどことなく寂しさを感じる。点の入らないチームにおいて寿人もその責任の一端を担がされたようなものだった。
 だが得点はその寿人によって決められた。そしてチームの奪った得点もその1点だけ。メンバーが替わっても点が入らないのは一緒、そして点を入れるのは寿人。そしてトーナメントを勝ち進むという必要最小限の目的は果たす。その上で普段試合に出てないメンバーの実践経験が積めたのは貴重だった。
 そんな試合、全ての情報は文字による結果報告だけだった。他の試合やってないのだから放送してくれればいいのに元々予定にないものをやるつもりはないようだった。他のスポーツならば災害に遭ったチームが奮闘してるとスポーツコーナーのハイライトでこじつけて放送したりするのにサッカーに限ってはそれすらもしないようだった。
 4回戦に進んだサンフレッチェ。とりあえずJ1のチームとしてのノルマは達成した。だけどこの大会、あまりにも長いスパンでトーナメントが進むのであまり気持ちが入らないというのが正直なとこ。かつてのようにリーグ戦終盤から一気に進めてもらう方が醍醐味があると思うのはぼくだけだろうか。

2014年8月24日 (日)

セレッソ戦~長い長いトンネル

2014/08/23 サンフレッチェ広島vsセレッソ大阪 エディオンスタジアム広島

 3日前、広島は集中豪雨により土砂災害の被害を受けた。元々自然災害の少ない広島においては防災意識は低かっただろう。それだけに40名も犠牲者を出した災害には少なからぬショックがあった。
 泥にまみれた家屋の映像。安佐南区といえばぼくがかつて住んでた地域。そしてエディオンスタジアムのある地域だ。そんな天災の犠牲者へ向けて試合前には黙祷があった。シーンと静まるスタジアム。ぼくもその場にいるような気分で目を閉じるのだった。
 黙祷が終わる。試合が始まる。このところちっとも勝てなくなったサンフレッチェはこの試合だけは勝たないといけない。それがこの惨事に対するほんの少しの報いでもあるのだった。
 サンフレッチェは間違いなく勝負を掛けてた。それはいつも途中出場でチャンスを演出してきた皆川とミキッチがスタメンということからも伺えた。そしたサンフレッチェは積極的にボールを取りに行く。ボールホルダーに対してきちんと身体を寄せる。自由にパスを出させない。それにより相手もパスの精度を落とす。そんなとこから攻撃の糸口が見つかるのだった。
 ところがせっかくのマイボールもしょうもないパスミスで攻撃が終わってしまう。特に高萩。スペースに出されても反応できず、パスをしたら一体どこの誰に出したのか分からないような場所に蹴ってしまいことごとくチャンスを潰してしまうのだった。もう駄目だ。高萩、頼むから交代してくれと思っていたら強烈がミドルシュートが飛んだ。GKにキャッチされてしまったもののその最初のシュートは高萩なのだった。
 それにしてもシュートが打てない。攻撃へ行けない。段々とセレッソの攻撃時間が増える。ドリブルで切り込む。それに翻弄されるサンフレッチェのディフェンス。ラインはどんどん下がり危険な位置でプレーされる。そして飛んでくるシュートに何度肝を冷やされただろうか。
 サンフレッチェのシュートは高萩の1本だけ。結局こうなってしまうのかとため息が出ていく。そしていつかは耐えきれなくなって失点してしまう。そんな死刑判決のような気分でモニターを眺めていた。ちっとも攻撃に出れないサンフレッチェは果たして勝つ気があるのだろうか。せっかく先発した皆川もまるで何もできず肩すかしもいいとこだった。
 しかし、皆川はクリアボールが収まるとマークするDFをモノともせずキープするのだった。その時間はどん引きに引いた味方の上がりの時間を作る。そして攻撃への糸口となっていく。そしてゴールの近いとこまで全体を押し上げることにつながるのだった。こうなると皆川をマークするディフェンダーもチェックが厳しくなるものの身体を張ったボールキープはそのほとんどが相手のファールとなってしまうのだった。
 次第に攻撃への機会お増えたサンフレッチェ。ミキッチが突破する、柏も左サイドを切り裂く。だがその後の展開が精度がなくことごとく潰れる。そして中央からも皆川の落としから柴崎のシュートはワンステップ余分だった為にDFに防がれてしまうのだった。
 シュートが打てない。最後の精度が足りない。どこからでも点が取れる、そんなサッカーをやってたはずのサンフレッチェは今やどこからも点の取れないチームとなってしまった。だがこんな時代もいあったな。でもあの時は久保という絶対的なストライカーがいたなと思っていたその時である。ミキッチから放たれたアーリークロス、それはクロスと言うにははるか後方からのものだったがゴール前に落ちる。そこに待ってた皆川はDFに囲まれるも胸トラップでボレーシュート。GKの真正面に行ってしまったもののあんな単純な展開でシュートまで行ってしまったことに胸躍らされるのだった。
 やはり皆川の高さと強さは相手の脅威となる。もっと左右から皆川を狙ったボールを出せと思ってたもののまたしても相手ボールの時間が増えるのだった。守って守って守って、そしてタイムアップの笛が鳴ったのだった。がっくりと膝を突く選手達。だけど観てるぼくも深淵のように深いため息をついたのも事実だった。
 点が入らない。それ以前にシュートまで行かない。それ以前に攻撃に移れない。それ以前にすぐにボールを取られてしまう。それ以前に相手のボールが取れない。この長いトンネルを抜け出すにはどうすればいいんだろうと考えると気が遠くなっていくのだった。

2014年8月17日 (日)

浦和戦~つまらないと言われたサンフレッチェ

2014年8月16日浦和レッズvsサンフレッチェ広島 埼玉スタジアム2002


 北越谷駅を降りた時、雨は勢いを増していた。そもそも天気予報で雨の予報はなかったはずだがと思ったのはぼくだけではないだろうことは駅前で雨宿りしてる人の多さで分かった。ただ、雲行きの怪しさはぼくに雨具を用意する思慮を与えてくれた。かろうじてカッパと折り畳み傘をバッグに入れてたぼくは無事バスに乗り込むことができたのだった。

 雨は降ったりやんだりを繰り返しスタジアムへ着いてからもまた勢いが出てきた。その為、コンコースから出る気が全くしなくなっていたところ、そう思ってたのはぼくだけでないようで仲間が座り込んで食事をしていた。よくよく観察すると所々にレジャーシートを敷いて弁当を食べてそれはさながら遠足のような状態であった。

 ぼくもそれに加わり駅前で仕入れた弁当を出すとおいしそうだと言われた。北越谷駅前は弁当屋が豊富でいつも選ぶのに迷う。実のとこ、それは埼玉スタジアムに来る際の楽しみの一つでもあるのだった。

 まだ小雨がぱらつくもののスタンドに出ていく。アウェイ自由席はもう一杯であらかじめ席を取っててくれた仲間に感謝するのだった。だがホーム側の自由席を見ると虫食いのように空席がある。どこのスタジアムにも言えることだがアウェイ席をもうちょっと広げるとういうことはできないんだろうか。

 選手がアップで入場すると皆ガバッと立ち上がる。前の人が立つので後ろの人も立つという感じでアウェイゴール裏は一斉に立ち上がり応援コールを始めるのだった。今日こそは、今日こそは浦和に勝ちたい。そんな願いを込めた声援だった。

 ところが試合が始まるとサンフレッチェは引いてしまってちっとも攻めない。それに気をよくした浦和は攻撃一辺倒だ。相手は攻めてこないのだからこれはもうやりやすいったらありゃしない。ゴールは割れないものの逆襲をされる怖さなど微塵も感じることなく攻めてくるのだった。

 サンフレッチェは守備で跳ね返しても相手ボール、スローインも相手ボール、ボールを奪っても6秒で相手ボール。そして守備ラインはどんどん下がると危なっかしい場面が多くなる。更にボールを奪ってもあまりにもゴールまでの距離が長くて攻撃にならない。そしてすぐに奪われてまた守備に追われるという悪循環を繰り返した。失点が恐いのだろうがこういう戦法をして耐えきれたことがない。いつかやられるだろうなと思ったらバイタルエリアでファールを犯してしまった。危険な位置でのFK。危険な場所で相手に自由にやらしてるのだからこうなってしまうのは仕方ない。

 キッカーは柏木だった。左足から放たれたFKはポストに当たって助かったかと思いきや跳ね返ったボールはフリーの阿部のとこに。それはもう目をつぶってても入るように簡単にゴールに入れてしまったのだった。

 またしても先に失点。どうするのだろう。ゴールがない以前にシュートまで行けない。シュートがない以前に攻めることができない。攻める以前に相手のボールが奪えない。これでどうやったら勝てるのだろう。同じ負けるにしても何かを残して欲しい。そんな時頭に浮かぶのは皆川の存在なのだった。

 後半に入って少しは点を取る姿勢は見せてきた。だけどどこをどうやっても活路が見出せない。何をやっても通じない。高萩など中盤でパスを受けるとトリッキーなパスで相手をかわそうとするもほぼ100%読まれていて全て相手にパスを出す結果となってしまう。それに業を煮やしたのか皆川との交代は高萩なのだった。残念なことに高萩は浦和戦では一度も通用したことがないのだった。

 だがさすがにこの状況で一人選手が入れ替わったとこで変わることはないだろうと思いきや柏からのクロスに飛び込んだのは皆川だった。そしてその後もシュートを打ったのは皆川だった。やはり皆川は違う。その大きいガタイは見掛けだけでなく相手を背負ってもキープできる強さがあり浦和のDFが手こずってるのは明白だった。そしてその皆川がDFを背負いながらもボールキールするとヒールで流す。走り込んだ柴崎。ゴール前、完全に抜け出した。左右に追走するDF。そしてシュート。だがこれはGK西川がしっかりとキャッチしてしまいこの試合最大の見せ場はゴールを決めることなく終わってしまったのだった。

「何か負けた気がしないのにな」

 帰る間際そんな声が聞こえてきた。

「もう皆川スタメンでもいいと思うんだけど」

 仲間のそんな意見に誰もがそうだと同意する。

「だけどつまんない試合だったなあ・・・」

 ドクトルが実感を込めてつぶやいたが否定する勇気はなかった。

 つまらない、つまらない試合で負ける。これってかつて言ってた台詞だったな。すっかり勝てなくなってしまったサンフレッチェ。昔に戻っただけと考えると少しは気が楽になるだろうとそう言い聞かせるのだった。

2014年8月12日 (火)

鳥栖戦~新たなヒーロー

2014年8月11日 サンフレッチェ広島vsサガン鳥栖 エディオンスタジアム広島


 止まらない失点、奪えないゴール、結果の出ない試合、どれを取っても良いところがない。3連覇と息巻いてた自信は見事に打ち砕かれ今や目の前の1勝を考えることで精一杯。さすがにそろそろ勝たないことには下の順位も不安になってきたのだった。

 そんな時、対戦相手の鳥栖は急遽監督退任が決まった。圧倒的低予算でありながらも首位につけてるその手腕、当然クラブは監督を評価していただろう。それだけにこの理由はどこかミステリアスでもあったが、単純に喜んでいいのだろうか。突然の指揮官の退任は士気に影響してくるだろう。それはもしかしたら鳥栖に新たな闘志を与える可能性もあるのだった。

 そんな色んな憶測が飛び交ってた試合当日、やってきたのは試合中止の連絡だった。台風による影響を懸念して急遽決まったもののどうして台風というものは決まって土曜日に来るものなのだろうか。実際に統計的に土曜日が圧倒的に多いらしいもののその因果関係は不明ということだった。ただ、夏休み期間の試合だった為にこの試合の為にわざわざ広島に行った人もいただろうにこの延期の知らせに影響を受けた人はそれなりにいたことだろう。四国を中心に水害まで発生してる今回の台風、目に見えないとこで色んな人が色んな形で被害を被ったのだった。

 そんな台風の影響で2日遅れで開催された試合。今度こそは勝ってくれるだろうという信念とやはり勝つことはできないだろうという疑心が入り混じっていたのである。ここ数試合のチームのパフォーマンスにどう考えても活路がないように思われたがふたを開けてみれば大胆な変更があった。何と絶対的エースであった寿人がいないのである。そして右サイドには清水が先発しバックも塩谷でなくルーキーの宮原が入ってるのである。GKも依然増田が入り、これは大胆な入れ替えであった。それぞれコンディション面での調整などもあったが、何かを変えないといけないという必然性があったのも確かだった。

 そんないつもと変わる顔ぶれであったもののサンフレッチェは相手のスペースで上手くボールを受けテンポ良く攻めることができたのだった。相手のボールを奪ってのカウンターもあった。まさに追いかけるDFを尻目に浩司はシュートを打った。そして柏のラストパスから柴崎がフリーでシュートを打つ場面もあった。だがそのどれも枠に入れることができない。GKに阻まれる以前に枠に収められないことに失意し、大きく肩を降ろすのだった。

 そうこうしていると次第に試合は膠着状態へ。両チーム、ボールを持っては遅攻で確実に攻撃を組み立てようとする。急いで攻めないので危険な位置で奪われるリスクがない分観てて全く点の入りそうな気配がないのだった。トップの石原までボールがいかない。メンバーを替えても結局こうなってしまうのかと再び溜息をつくのだった。

 そんな動きのない展開に業を煮やしたのか、サンフレッチェは先にメンバーを入れ替えてくる。特に悪いとは思わなかったがルーキーの宮原は塩谷に早々に代えられてしまった。そして右サイドにミキッチである。そしてそれでもスコアは動かないとなるとトップに皆川が入るのである。点を入れなきゃいけない状況、後半の勝負所でスピードのあるミキッチと巨体の皆川を入れるのはもはや定番になってきた。

 ところが肝心の右サイドのミキッチにボールが入らない。ミキッチにさえ渡れば一人でドリブルで駆け上がってクロスまで入れるので皆川も生きるのだがそれができない。シュートまで行けない、シュートが打てない。良いとこまでは攻めることができるのに鳥栖の守りもなかなかに粘り強かった。さすがに首位を走ってるというだけはあるのだった。

 だがその時左サイドの柏にボールが入った。柏は縦へ突破するのではなく中へ切れ込むとペナルティエリアに近付いた。寄せる鳥栖のディフェンス。もう余裕がないと思ったその瞬間ゴール前へ短いクロスを上げた。それは相手の守備の間を行くボールだったものの中途半端な気がしたもののここに飛び込んだ選手がいた。デカい身体を押し倒して頭にぶち当てたのは皆川。そのボールはゴールに吸い込まれてた。

「ミナガワ、ミナガワ、ミナガワーッ!」

 TV観戦であるぼくは恥も外聞もなく叫んでしまった。前半戦、ほとんど試合に絡むことのできなかったこの大卒ルーキーは明らかにサンフレッチェを助ける存在になっていたのである。

 残り時間は少ない。だが鳥栖はここから勢いを増してきた。単純なロングボールであっても豊田の存在は脅威であった。もうサンフレッチェはマイボールになっても時間稼ぎするのが精一杯である。だが終いにはそれすらもできないようになり今度はクリアするのが精一杯。早く終われ、早く終われ。虎の子1点を守る為の時間が異様に長く感じるのだった。

 そしてタイムアップの笛が鳴った時、しばらく忘れてた胸の高鳴りを憶えるのだった。大量失点後の勝利というのも嬉しかった。無失点で終えたというのも嬉しかった。だがそれ以上に皆川という大卒新人選手が奪うべきところで奪うという結果を残してるとこに新たなヒーローの光を感じることだった。

 1点、たった1点での勝利であるのにいつまでもその余韻に浸かりたい気分になるのだった。

2014年8月 4日 (月)

鹿島戦~完膚なき敗戦

2014年8月2日 鹿島アントラーズvsサンフレッチェ広島 カシマサッカースタジアム

 

 ペナルティエリアでの1対1だった。相対した水本はボールにチャレンジすることもなくコースを限定することもなく立ち尽くした結果余裕でかわされシュートを打たれてしまった。それは呆気ない、呆気ない失点だった。またしても先に失点してしまったのである。

 元々ボールがちっとも前に行かない状況はこれにより一層拍車が掛かり手も足も出せないまま前半を折り返してしまった。前線はどこもかしこも固められ手詰まりである。それでいて塩谷のオーバーラップや千葉のドリブルでの上がりなどというプレーは出てこない。もはや失点が恐くて思い切ったプレーができないんだろうか。

「闘え、広島!戦え、広島!」

 ハーフタイムで引き上げるサンフレッチェの選手にサポーター席からそんな声援が送られた。ボールは後ろと左右をうろうろするばかりで攻撃への意図がまるで見えない状況はそんな言葉を投げかけたくなるのは当然だった。

 そんなチームを変えようと後半早々に皆川とミキッチが出てくる。どうしようもなくなった時、この2人が出てくるのはもはやパターンとなってきた為にその期待は高まる。ゴール裏のボルテージは一気に上がった。するとそのゴール裏の熱気に呼応するかのように攻撃は勢いを増す。ミキッチはボールを叩くにしてもドリブルするにしても淀むことなく滑らかだ。それがチームに潤滑油を注入したように前線は躍動し、皆川も身体を張ったポストプレーが冴えわたる。これはいけると思った時、2、3人の連動で左サイドから駆け込んだ柏がフィニッシュを決めたのだった。

 同点。どわぁっ、と立ち上がるアウェイゴールエリア。これはいける。ゴールを決めた柏も左サイドに移ってから相手を抜くシーンが多くなった。皆川も身体を張って前線でボールを失わない。そしてその高さはミキッチのクロスにより脅威を与えるものとなる期待があった。

 同点にされた鹿島は審判に詰め寄る。ああ、またしても得点を取り消してもらおうとしてるよ、そんなことを客席でぼくらは話していた。昨シーズン抗議によって実際にゴールを取り消された記憶の消えないぼくらはそれを見て余計に勝ちたいという気持ちが高まったのだった。

 サンフレッチェの攻撃は続く。深い位置まで侵入する。そしてシュートチャンスも訪れる。だがそのことごとくを外してしまうのである。ああ、あの決定力の低さはどうにかならないものだろうか。そしてそんなゴールを決めれない状況が鹿島に余裕を生んだのだろうか、カウンターにより一気に攻め込まれる。全速力で戻るディフェンダー。だが誰も追いつくことはできずに勝ち越し点を許してしまったのだ。

 これは痛い。だがまだ追いつける。そんな気概を持つものの相手にCKを与えてしまう。そして一瞬サンフレッチェの意識が緩んだ隙に放ったキックはファーのペナルティエリアの外へ。それをボレーシュートを叩き込まれ、文句の言いようのないゴールを決められてしまった。そのゴール、追い上げてた時にやられたという精神的ショックは相当なものだった。

 点の取れないサンフレッチェ。もはや2点差は絶望的と言って良かった。だがこのまま負けるのは癪に障る。せめてもう1点取って何かを残したい。その何かを残す為に皆川は相手を抱えながらもヘディングシュートを放つ。柴崎はミドルシュートを放つ。左サイドからもシュートを放つ。だがそのどれもゴールの枠を捉えることができないのだった。

 そうこうしてる内にまたしてもカウンター。水本がダビィと1対1の状況に追い込まれる。だがこれも水本が倒れてしまいドフリーのままゴールに突き進められ決められてしまうのだった。水本が倒れた瞬間、ファールではと思ったが副審も目の前で見てる主審だって見てたはず、単に水本が競り負けたんだとその判定に疑問を持つ人はいなかった。だけど後で録画を観るとダビィはしっかりと手で押して水本を倒している。明らかなファール。明らかな違法行為。明らかなラフプレー、そんなのを主審は見逃してしまった。副審も見逃してしまった。そして鹿島もそんなゴールに喜びに喜んでいるのだった。

 4点も取られ悲嘆に暮れるもその後またしても失点を喰らい結局5点取られて負けてしまった。もはや失点が止まることを知らないのだった。

「中断終わって無失点の試合ってないよね」

「ああ、確かにないねえ。中段期間中、攻撃にテコ入れしてたということだからどこか混乱してるのかもしれんな」

 ドクトルとそんなことを離しながら失意の内にスタジアムを後にした。

「あ、ちょっとコンビニ寄らせて」

 駐車場に入る前に寄ったコンビニエンスストアでは鹿島の紅いユニフォームの人がレジに並んでいた。そんな中に紫のぼくも並んだのだが突然背中を叩かれ振り向くとそれは紅いユニフォームの人だった。

「今日は残念でしたね。でもサンフレッチェってユースから選手育ててあれだけのサッカーを創り上げて素晴らしいですよ。ぼくは鹿島を応援してますがクラブとしては尊敬してます」

「あ、ありがとうございます・・・」

 妙な励ましを受けてしまったもののそんな一言により救いの心情を受けたのだった。

2014年8月 3日 (日)

鹿島戦~暑き気温、熱き気持ち

2014年8月2日 鹿島アントラーズvsサンフレッチェ広島 カシマサッカースタジアム


 

「いやあ、暑いぜ」

 千葉で待ち合わせしたドクトルはそうつぶやいた。日差しは照り付け熱気はむんむんとする。一体今年は冷夏だなどと予報したのは誰だと文句も言いたくなったもののすでにそんなこと言われてたことすら覚えてる人はいないだろう。

 駅前では浴衣の姿を多く見られいたるところで花火大会が開催されてるというのを知った。かくいうドクトルも近所で開催されてるものに行く予定だったらしいが急遽変更して車を出してくれることにしたらしい。それもこれも車を持ってないぼくが鹿島へ連れてってくれと頼んだせいだ。ああ、何てありがたいんだろう。

 そんなドクトルの好意により無事鹿島まではたどり着くことができ、民間駐車場へ乗り込む。ただし受付に近付くも誰も出てこない。掘立小屋のようなその建物の中に声を掛けるとやっと老人が出てきた。

「車、どこの場所に停めればいいんですか?」

「うーん」困った様子のおじいさん。何を悩む必要があるんだろう。

「その入り口の脇でいいよ。本当はそこ鹿島の応援団の人の専用スペースだけど最近来なくなっちゃったから。弱いから来ないのなか」

 じいさんの悩んでた内容は分かったものの敵チームとはいえそうやって以前来てた人が来なくなるというのは寂しい想いもするのだった。

 駐車場からスタジアムまで51号線を一直線に歩く。外から観てるとコンコースの屋台から煙がもんもんと出ているのがよく分かる。だが、路上ではかつて出店してた程の屋台は見られず、スタジアムへ向かう人もそれ程多くないような気がしたが、アウェイゲートをくぐるとその出店はわずか2つしかないのだった。

「やっぱり優勝決定戦とは違うな」

 ドクトルはつぶやいたが、アウェイゴール裏はさすがに空席が目立った。夏休みとはいえ鹿島じゃあよっぽど好きな人以外来ないだろうなというのは容易に想像できた。

「いやあ、今日は選手も大変だろうな。座ってるだけでこれだけ暑いんだから」

 客席に着いたドクトルがそう話したが選手が入場するとアウェイゴール裏は沸きあがった。そして決して多くはなかった人数でも出せるだけの声量を出してのチャントが始まり、熱気を更に上げた。そしてその時はこの勢いなら大丈夫、そんな妙な自信を感じたものだった。

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サンフレッチェの魂~リンク集

  • SANFRECCE Diary
    このブログを読んでる人ならすでに知ってるだろうから今更リンクを貼るのが恥ずかしい気もする。 何せこのサイト1997年から毎日更新してるというのが凄い。 過去の記事などはぼくも参考にさせてもらうことも多い。 継続は力なりというが実際には継続するのに力がいる。 そういう意味でも管理人のせと☆ひできさんは偉大である。
  • ススボウブログ
    自分サッカーやグルメについてのブログということです。 かなり熱心に応援してる方のようです。
  • ひろしま日記&サンフレッチェコーナー
    試合を時系列で紹介したりかなり凝った内容となってます。 現地の様子など行った人でしか分からないことがあり興味深いです。 試合に行った人も行けなかった人も楽しめるのではないでしょうか。
  • ゆみしん徒然の書
    ゆみしんさんのブログ。本当に色んなスタジアムに観戦に出かけて現地の様子をレポートしてます。観戦者視点でそれぞれのスタジアムの様子が分かり現地に行く時の参考になりそうです。
  • Scud Sanfrecce
    MICRAさんのサイト。ここの特集のコーナーは必見。サンフレッチェはなぜ人気がないかという考察については今までに見ない観点がある。是非一度読んでください。
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    今そこにある危機。サンフレッチェにはメディアが少ない。その為妙にぬるい記事が目立つ。そんな甘い現状にこのまま放置していいのかという危機感を感じた時発言していく。

ぼくのミュージック・ライフ

  • Songs Remains the Same
    Led Zeppelin: 聖なる館
    数あるレッド・ツェッペリンの名曲の中でもこれが特に好き。この曲はダブルネック・ギターがあったからこそできたような曲でこういう変則的なギターを使いこなしてるという意味でもジミー・ペイジは凄い。ロックの歴史の中で数々のギターを使ったギタリストはいたがこうしてちゃんと曲のクオリティーを保った形で生かした例というのは他にないのではないだろうか。だからぼくはレッド・ツェッペリンのライブではこの曲が一番聴きたい。そういう意味でDVD、CD含めてライブの音源が一枚しかないというのは勿体無い。だからツェッペリンの海賊版はやたらと高いんだろう。 (★★★★★)
  • モータウン・ジャンク
    Manic Street Preachers: ジェネレーション・テロリスト
     ぼくはこの曲を聴いた時はぶっ飛んでしまった。パンクのエモーショナルな躍動感がありそれでいてヴォーカルの高い声。パンクとは一線を引いてるようでその情熱はパンクだった。ハードロックとも言えないその曲調はこのバンドの大きな特徴だった。  元々このバンド、2枚組みのアルバムを出して解散すると豪語してたが結局15年経った今でも活動している。しかもCDは当時より売れて作品の評価も高くなってる。同時期に出たバンドがまるで残ってないことからすると相当に快挙である。それについて本人達ももっともらしいコメントを出すがそれがいかにも洗練されてる。パンク的でありながら教養のある人達だというのが分かる。そのどうしようもなくハチャメチャでありそうでいながら実はごくマトモな人達というギャップが親近感を呼んでる。だからこのバンドの曲は歌詞までジックリと読んでしまう。  しかし、この人達の作品は結構多く全部網羅するのは骨が折れる。この音楽へのバイタリティ、これだけは間違いなく本物だということだ。 (★★★★★)
  • ルイ・ルイ
    Johnny Thunders: New Rose Collection
     ジョニー・サンダースの死後に出たライブ音源とアコースティック・ギターによるスタジオ録音を音源に編集したアルバム。その中でもこの曲とDo You Love Meは圧巻だった。ラジカセで録ったような音源であるが、それが逆に臨場感を出している。分かる人にしか分からないという作品だ。  ちなみに現在このCDが売ってるのかどうか知らない。これだけセンスのある人がこんなカルト的な存在で終わってしまったのは理不尽な気がする。だからこそ好きな人にはよりたまらない存在になってしまうのだ。 (★★★★)
  • ロクサーヌ
    Police: ロクサーヌ
     これが売春婦に関する歌だと知ったのはずっと後のこと。歌詞も分からずずっとこの曲を聴いていた。勿論歌詞を知ってからもこの曲は大好きな曲だけど。  本当かどうか知らないけどこの曲の入ってるファースト・アルバムはわざと下手に演奏したらしい。理由は当時パンク・ニュー・ウェーブのブームの中でスタイルを合わせたということだろう。そしてセカンド・アルバムでは実力に見合った演奏で上手くなったと思わせたらしい。そういわれてみるとファーストでは音数が少ないシンプルな曲が多いような気がする。このバンド、5作しかアルバムがないのだがそういう抜け目なさというのは元から持ってたようだ。5作とも素晴らしく駄作のないバンドだった。 (★★★★★)

ぼくのブック・ライフ

  • トニー・サンチェス: 悪魔を憐れむ歌
    ローリング・ストーンズの暴露本である。現在は改題され『夜をぶっとばせ』になってるがタイトルといいブックカバーといい前の方がシックリしていた。 ストーンズというのはぼくが最も影響を受けたバンドの内の一つだが、ここまで無茶苦茶をやってそしてそれが逆に彼らのダークなイメージにつながった。まさにロック・バンドの典型である。どんなに悪ぶっても彼らのようにはなれないし彼らのような影響力は出せないだろう。 時代をロックと女とクスリと共に駆け巡り気付けば巨大産業に飲み込まれていったストーンズ。作者はそんなストーンズに最後は身も心もすり減らされてしまったらしい。それでも未だに活動しているストーンズはある意味怪物だ。 ぼくとしてはこの本の訳者中江昌彦の翻訳もその場に居合わせたような感覚になるのが良かった。他にも『レス・ダン・ゼロ』などもいい雰囲気を出してた。今まで本なんか読んだこともなかったぼくが高校生の時読んで凄いショックを受けたのをよく覚えてる。当時のブックカバーの最後に「END]という文字が書かれてたが読後その文字が見た目以上に大きく見えたものだ。 (★★★★★)
  • 落合信彦: 第四帝国
     まず最初に断っておこう。これはトンデモ本である。ここに書かれてる内容は根も葉もないことと言っていい。そもそもこの落合信彦という人がゴースト・ライターを使ってマトモに取材してるかどうか怪しい。本人いわくCIAに100人も友人がいるというから情報には事欠かないということらしいがこれではアメリカ政府のトップシークレットがなぜか来るというUFO研究者と言ってることが変わらない。そういえばUFOに関しての記述もこの本ではありオリジナルな展開を見せてるのは興味深かった。  内容はナチス・ドイツの残党が世界各地で暗躍してるというものでヒトラーは生きてる、UFOは実はナチスが造ったというファンタジーが溢れてる。その展開はちょっとしたSFといっていい。  事の真実なんてどうでもいい。ただ単純にエンターテイメントとして読めば何の問題もないだろう。誰も「ゴルゴ13」を読んで事実と違うと言わないだろう。それと同じことだ。  しかしこの人、いかにも事実というように書くのが上手い。文章も簡単でスラスラと読めるので展開のテンポがいいのである。だから知らないうちに読んでしまってるという感じになる。そのスタイルはぼくもずいぶんと参考にさせてもらった。  まあ実際はゴースト・ライターなんだが。 (★★★)
  • ニック・ホーンビィ: ぼくのプレミア・ライフ
     このブログの元ネタとなった本。この本との出合いはサンフレッチェの応援仲間に渡されたことだ。その存在は知ってたものの読む機会がなかったのでありがたかった。  内容はというとアーセナルを応援する著者のその観戦生活といったとこだがこれを読むと結構日本のサポーターもプレミアのサポーターも変わらないとこがあるのがわかる。退屈な、退屈なアーセナルというタイトルには笑ってしまった。なぜなら分かり過ぎるくらい分かる心情だからだ。ぼくもサンフレッチェを応援してて何度同じことを感じただろう。  今やアーセナルはプレミア・リーグでも優勝しチャンピオンズ・リーグでも決勝に進出するような存在。一方ぼくの応援するサンフレッチェ広島はJリーグの1部リーグで常に降格の危機を感じるクラブ。でもその根っこは同じである。海外サッカー好きにはJリーグをバカにする傾向があるがそういう人には分からない内容かもしれない。 (★★★★★)

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  • Jリーグ2010特命PR部員 Miles