神戸戦~Up and Down with Snfrecce
2009/06/21 サンフレッチェ広島vsヴィッセル神戸 広島ビッグアーチ
「エエエエエッ、あれがPKぃぃぃっ!」
FKの壁に入ったミキッチの手には確かにボールが当たってた。だけどあれは直撃を回避するため身体を横に向ける、言わば防衛本能のようなもので無意識の結果だった。あれでPKというなら強烈なキックを真正面でブロックしなきゃいけないということだろうか。いや、やっぱりあり得ない。
このPKを大久保がいとも簡単に決めてしまった。正直前半は何の印象もなかった選手にゴールをプレゼントしてしまった。プレゼントと言えばサンフの1点目も北本のオウンゴールなので同じだがこのPKは納得いくようなものじゃなかった。2007年も大久保のPKで負けた。もしかしてまた今度もという悪い予感が走った。
それでもスコアは2-1。まだ勝っている。それなのにサンフレッチェは一度傾いた流れを食い止めることができない。すぐに左サイドからクロス気味のボールを直接ゴールに入れられてしまった。唖然とした。あれが入るのかよ。そのあまりにもあっけない同点へのプロセスに対してぼくらは言葉を失った。これで振り出しに戻ってしまった。
前半終了間際には高萩の絶妙なトラップとピンポイントのパスで槙野が豪快にシュートし2-0とした時にはもうこの試合は決まったという気がしたものだ。それでも1点目が開始1分とあまりにも早い得点だったことが逆に不安を感じていたのだった。大体あまりに早く得点すると負けてしまうというのはよくあることだ。だからこそ槙野のゴールは本当に救われたのだった。
同点にされたことで点を取らなければいけなくなった。それなのに悪い流れに陥ったサンフレッチェはパスがつながらない。苛立ちが募る。攻めろ、攻めろ攻めろ、もっと攻めろ。熱くなっていたぼくは声に出して言っていたかもしれない。そしたら前掛かりになった裏を取られ茂木に逆転ゴールを決められてしまった。よりによって茂木に決められてしまった。小野監督に潰されて広島を去った選手に決められた。それがまたショックを強めたのだった。
もう負けた。またしても2007年の繰り返しか。もはや希望をなくしてしまった。今日勝たないとマズかったんだけどなとドクトルが呟く。ガックリ肩を落としてしまいもはやこの試合に何の希望も持てなくなってしまった。
攻めてもシュートまでいけなかったりボールを失ったり、もう駄目だとため息ばかりが出てしまうのだった。神戸もイエローを貰う頻度が多くなりこの試合をこのまま閉めようという意気込みがあった。せめてあのPKさえなければ。こういう展開にはならなかっただろうに。ここでまたレフリーへの怨みつらみを感じるのだった。
残り10分。ああ、もう時間がない。打開することはできないのか。そんな時寿人へボールが入った。でもそこにはDFががっちりマークをしておりシュートを打てそうにない。何とか取られないようにボールを後ろに流す。そしてそこに走りこんでいた柏木。強烈なシュートをGKとゴールの枠のわずかな隙に叩き込んだ。
「うおおおおおおっ、柏木が決めたーっ!」
モニターの前で観戦してた3人は声を上げた。
「柏木、やっとお前はこういう時シュートを入れられるようになったか」
ドクトルが諭すようにコメントしたが本当に柏木はこういう場面でいつもシュートを外していたものだった。これで同点。やっぱりまだ行けるぞ。
息を吹き返したサンフレッチェは途端に躍動感を得たようにいつものパス回しが冴えまくる。そして今度は高萩のシュート。ただしこれは威力がない。だがゴール前の寿人に当たったことにより軌道が変わりゴールに入っていった。
「うおおおおおおっ、入ったあああっ!」
気が狂ったように騒ぎ出したぼくらだった。後でリプレイを観たら寿人が触ってはいるだろうがその後ろでマークしてた北本の足に当たってた。北本2ゴール目じゃないかという声に他の2人もドッと笑いが込み上げた。
しかしここからが苦しかった。あと5分しかないというのにこの5分が長いこと。こんなの普段のパス回しをやってると軽く過ぎてしまいそうな時間なのにこの後バタバタと攻められてしまうのだった。ゴール前でのFK。ああ、ヤバイ。相手の精度のなさで助けられた。それでもまたFK。逆転をするまではあれだけボールを支配してたというのに落ち着かない。そしてまたしても相手の精度のなさで助けられ最後は選手交代で時間稼ぎをしてこのピンチをやっとのことで切り抜けたのだった。ああ、心臓に悪い試合だった。
終了のホイッスルは歓喜の瞬間というよりホッとした安堵感の方が大きかった。そしてあまりにも感情の起伏が激しかった試合だけにその後のハイライトでは前半の映像が遥か昔のことのように感じられたのだった。
3人は試合を振り返り審判は酷かっただのでもあのPKはやっぱり失敗だったと気付いたから神戸にイエロー乱発したんだろうとか議論が白熱するのだった。そして試合中は罵声と歓喜を繰り返しその声は遠く木霊しただろう。この閑静な住宅街、さぞやドクトルの家では何が行われてるんだろうと近所の家に思われたことだろう。


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