木寺と戸田
木寺が解雇で下田が契約更新というのは理不尽かもしれない。だがそこは生え抜きと移籍して来た選手の違いである。同じ能力なら下田を残して欲しいと考えるのは当然だ。ただこの場合下田がリハビリからなかなか抜け出せないというのが問題だ。結局1年リハビリに費やしてしまい来シーズンも治るかどうか分からない。非情に徹するなら下田を解雇するのだろうがそうしなかったのは判断として間違ってないと思う。
2008年、サンフレッチェのGKは木寺で始まった。最初こそ不安定なセービングに肝を冷やされたが段々と安定感が付いていった。真正面に来た何でもないボールをキャッチしただけで拍手が起こるというおよそプロではあり得ない光景は少なくとも今までは見たことがなかった。そしてキックをすればコートの半分も跳ばない、しかもラインを割ってしまうという素人顔負けの精度。キックがヘタという意味ではサンフのGKとしてちゃんと伝統を守ってるGKなのだった。
しかし、試合に出続けてる影響かいつの間にか木寺のプレーは徐々に安定し堅実なものとなっていった。明らかなウィークポイントと思ってたGKは手堅い存在となりこれでこのシーズンは下田が復帰しなくとも安泰という雰囲気になった。そして木寺が負傷をしたのはそんな時だったのだ。
水戸戦での負傷。相手との接触で肩から落ちてしまった。駆けつけたトレーナーがバツのサインを出した時せっかく築き上げたものを崩されたような気がした。そしてピッチに立ったのが佐藤昭大、不安で不安でたまらなかった。木寺と較べて経験も少なければ見た目の迫力もなかった。GKは他のチームから補強するしかないだろうと思われた。
それが大誤算だった。確かにGKの補強は行ったが昭大はなかなかだった。それどころかキックの精度は歴代サンフレッチェGKの中では間違いなく1位だった。相手のプレスも冷静にかわし見方へパスをつなげる。昭大になってGKからのパスが攻撃につながるというスタイルができていった。こういうのは下田では無理だろう。そして課題だった守備範囲の広さも試合を重ねる毎に広くなっていくのだった。
もはやサンフレッチェにはアキがいる。そういう雰囲気になっていった。来シーズン木寺が昭大からポジションを奪うことはできないだろう。そうなると決して若くない木寺ははじき出されるのは当然だった。
ついてなかったのだろう。そして昭大はついていたのだろう。サッカーは得てしてこういう理不尽なことが起きる。特に1人しか出られないGKは尚更理不尽なポジションである。木寺は来年どこかのチームでプレーしている姿を見れれば幸いだ。
こうやってもう来年の人事に向けた話が出る時期になってしまった。それなのにサンフからは他にこれといった話が出ない。これは天皇杯があるせいだろう。やはりあまり早くから人事のことを発表したチームというのはもう今シーズンは終わったという印象を持ってしまう。そういう状態になったチームはどうしてもモチベーションが低くなる。このモチベーションの低さが天皇杯の試合の質へ影響を及ぼすとこれまで何度も問題になったものだ。
実はこのモチベーションの問題になるとこの時期のサンフは強いかもしれない。Jリーグの中でも比較的選手の入れ替えの少ないチームである。だからこそ3度も決勝まで進出したのだろう。そう考えると小野監督の時は入れ替えが多かった。それに比例して天皇杯ではまるで勝てなかった。見事な相関関係が成り立ってるじゃないか。
木寺の話してるのに小野の名前が出てしまう。本当は名前も出したくないのに。ある意味恐ろしいまでにインパクトのある人だ。
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