横浜FC戦~感化させた勝利
2008/05/21 サンフレッチェ広島vs横浜FC 広島ビッグアーチ
平日の夜、サッカー観戦をするには様々な障害を乗り越えなくてはいけない。しかもその障害はそう頻繁に乗り越えられるものでもない。通常そういうものは生観戦の時に取っておくのだがモニター観戦に使ってしまった。といってもまあ仕事を定時で終えるというごく普通のことだ。残業が出る訳でもないのだから当然のことをやってるまでのことであるが。
ただ、ぼくが店に着いた時にはもう試合が始まってた。いつもの観戦仲間が4人最前列のテーブルに着いてた。何でもこの日は通常営業ということでサッカー観戦の人はこちらでとエリアを決められたらしい。ということはそこそこ埋まってる店内の客はぼくらの一喜一憂をうるさいなあという冷めた目を向けるのだろうか。まあ仲間とモニターに神経を持っていくとそんなこと意識からなくなってしまうのだが。
「段々とスタンドが埋まってきている。みんな職場からやっとたどり着いたんでしょう。私たちもそうよね」と時間と共に人が集まってきたアローズと同じ様子がスタジアムにも起こってるのを指摘した。やはりそう簡単に平日は集まれない。それでも6,954人集まった。多いとは言えない。でも絶対にスタジアムに行きたいという人の分母が確実に多くなってないだろうか。
そんな中試合はじれったかった。圧倒的に攻めながら最後の崩しで躓く。ボールを前に運んでも運んでもゴールには結びつかない。クロスは跳ね返される、ミドルシュートは枠の外、CKもキーパーにキャッチされてしまう。頼みの寿人は決定的チャンスを2回も潰してしまった。疲れてるのだろうか。つかれてるのなら交代枠があるだろう。ベンチには久保がいるんだよ、久保久保久保―っ!
しかしミシャの選んだのは平繁だった。高柳との交代だ。この時高柳の髪型って天然パーマなのなどという会話がされたことがいかにプレーに印象がなかったが分かる。10年に1人の逸材ぐらいの勢いで語られた才能はその片鱗さえもピッチで見せることがない。詳しい人が見ると分かるものなのか?だけどプロサッカー選手を支えているのはぼくのようなサポーターだぞ。そのサポーターに何のアピールも与えられない選手にプロとしての価値があるのだろうか。期待が大きかっただけに失望感が大きいのだった。そういえば高柳はすぐにネガティブな感情になるということだが最近の研究で楽観主義者は脳の偏桃体という部位が活発になってるという研究結果が出たらしいがその内高柳でも前向きになれる薬でも開発されるのだろうか。いや、それを世間ではドーピングと言うんだった。
そしてこの膠着状態を打破すべく入った平繁だったがなかなかボールが渡らない。ペナルティ・エリアでのドリブルを期待するがいい位置でボールが持てない。相手も平繁がドリブラーということは分かってるはずだからそう簡単には事が運ばない。そしてどんどん時間が過ぎていく。ああ、じれったい、じれったい。攻めて攻めて鍵がこじ開けられなくカウンターを受けることもあった。アンデルソンは確かに恐かった。それでもストヤノフと槙野は負けなかった。横浜FCの精度のなさにも助けられた。そしてこのままタイムアップかとやきもきしながらも高萩の蹴ったボールはゴール前を跳び越してしまった。だがそこに森脇が上がっていたのである。そして深い位置からの横パスに平繁が押し込んだのだ。
ウォーッ、という歓声が起こる。しかしそれはぼくらのテーブルだけではなくてその他他の客からも声が上がっていた。いつの間にかぼくらの応援に感化されてたらしい。この恐らくサンフを見に来た訳ではない人達が盛り上がってたのはゼロックス・スーパーカップで優勝した時のような感覚だった。さっきまで片隅に追いやられたと思ってたぼくたちだが店内の一つになってたのだった。
ただそこからお決まりで点を取った後不安定になるのだった。そして今度は早く終われ、早く終われとなるのである。ボールがつながらない、トラップミスをする、ボールを取られる、またしてもじれったい展開だ。横浜FCの選手が倒れてしまって時間を稼いでくれたので助かった。もうこうなったらどんなでもいいから審判に早く笛を吹いてもらいたかったがロスタイムに入って投入された久保をもうちょっと見たいという気がしないでもなかったのだ。
ほどなくしてタイムアップの笛。店内みな拍手をしているのが印象的だった。後で聞いてみるとサッカーが好きでこの店に来てるとか本当は柏サポーターだという人もいた。だから何気に観戦は楽しんでたようである。最後に柏スタジアムにも今度来てくださいと言われたが来年絶対行くつもりだよ。今年行けないのが残念だと言っておいた。
「今日の観戦面白かったね」と帰りしなメンバーの女性が言った。「これからナイトゲームが増えていくから今日みたいな観戦会も楽しいよね」ということだった。確かにこれまでの貸切とは違って徐々に周囲を巻き込む雰囲気、これは面白い。これからまたこのような雰囲気で観戦できたら最高だなと思うのだった。
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