2008/03/20 湘南ベルマーレvsサンフレッチェ広島 平塚競技場
「5年前と一緒だな」
「いや、5年前の方が酷かったでしょ。あの時は風も吹いてたから」
2003年の記憶を手繰り寄せそんな会話をしてたが時間が進むに従ってどんどん風も強くなってきた。嵐のような天候、やっぱり5年前と一緒じゃないか。
その天候はキックにおいて多大な影響を与えGKの蹴るボールは高く舞い上がり上空で進路を戻すのである。普通じゃ見れないボールの軌道、グラウンダーで蹴れば水を含んだ芝がボールを止めてしまう。かといって場所によってはボールが走るしボールは予測不可能な動きをしてた。平塚競技場のピッチは見た目の鮮やかさとは裏腹に水捌けは良くないようだ。
果たしてこれはサッカーと言えるのだろうか。いや、これは別の競技に違いない。パスをつなぐとか連携を取るとかボールのないとこでの動きだとかそんなの関係ない、ただボールが来たら蹴る、そして攻められればタックルに行くというような試合だった。といってもルール自体はサッカーに変わりないのでこの状況でどうやって点を取るかであった。そこで浩司がとても理にかなった方法で点を取ったのである。直接FK、見事に決まった。浩司のFKは本当に武器になってきた。できることなら去年見たかった。こういうキックを蹴るのになぜちっともチャンスに結びつかないウェズレイにFKを蹴らしてたんだろう。
しかし試合は押されっ放しだった。ボールがセンターラインよりも後ろばかりに来る。サンフは守備してばかりだ。こいつら、やる気あるのかよと穏やかでない感情が生まれたものの後半になりピッチが変わるとと今度はサンフが攻めていた。単に風上に立った方が有利で選手のパフォーマンスの問題じゃないとこの時気付いたのだった。
そしてこの日の2点目はゴール前の混戦で槙野のバイシクル・シュートだった。これは入れ替え戦第2戦目のロスタイムと同じ光景である。違うのはあの時は外れて今回は入ったというとこだ。ああ、あの時入ってれば今頃こんな所にいなかったのに。でもあの時は入れることはできなかったが今回は入れることができたとも言えるのだった。
槙野はゴール後にサポーター席に向かって弓矢を射るパフォーマンスをやった。ウェズレイが発案したこのパフォーマンスを誰が引き継ぐのかと思ってたが槙野がやってのけた。槙野の放った矢にサポーターは仰け反る。皆カッパ姿で動きが鈍いが精一杯の動作で応えてやった。何だかピッチとスタンドが一体としてるようで楽しかった。
試合はこのまま0-2で勝つことができた。この日もストヤノフは大活躍で最後の場面はストヤノフで全て跳ね返してしまった。そしてキックの危うい木寺は途中からゴールキックを全てストヤノフに蹴ってもらってた。キーパーのプライドとしては色々とあるだろうが正しい判断だった。蹴っても風でどこに流されるか分からないがそれでもキック力のあるストヤノフが蹴れば遠くには飛ばしてもらえる。そして威力があるから風の影響も受けにくい。ストヤノフは1回でもいいからミスというものがあっただろうか。1対1では抜けない、それでいてポジショニングもいい、ボールは失わない、完璧である。あの状況下でサッカーをやってたのはストヤノフだけではないだろうか。まあ湘南のアジエルもドリブルで3人、4人と抜いてたのでレベルの高い選手は悪条件でもサッカーという土俵へ持って来れる軸を持ってるのだろう。そういう意味で平繁がボールを前に運べなかったのは残念であった。
試合後あまりにもバス停に人が並んでたので駅まで歩いて行くことにした。道路は渋滞でとてもバスが来るような気配がない。やはり歩いたのは正解だったろう。
「そういや5年前も酷い天候だったけどゴールキックが空中で戻ることはなかったよね」
一緒に帰った数人の内の一人が言った。
「いや、あの時もしっかりとボールが戻ってましたよ」
記憶は曖昧だ。そりゃそうだ。嵐の中で観戦して今は辛い。だから今が一番とんでもない状況にいると感じるのは当然。もう二度と平塚は来たくない。もしかしたら5年前もこんなことを言ったのかもしれない。