ストライカー寿人
佐藤寿人こそ広島のストライカー。もっとも得点の見たい選手。そして得点の期待できる選手。それなのに、いやそれが故に得点できないと一番歯痒い思いをする存在である。
2007年シーズン、2年連続日本人得点王になった実績からシーズンに賭ける思いは強かったと思う。日本人の中ではなくJリーグの得点王を目指そうという志があったろう。実際にインタビューでもそう答えてたし周囲も今シーズンは何点取るのかと期待してたはずだ。それがシーズン中盤以降パッタリ点が取れなくなり本人も焦っただろう。期待が大きかっただけに失望感は相当なものだった。
応援席から仙台に帰れという野次が飛んだ時思わずスタンドに詰め寄ってしまった。人間本当に気にしてることを言われるのが一番ムカつくものである。寿人はあの時ゴールが奪えないということを誰よりも悩んでたんだろう。それだけ真剣に考えてたのである。ゴールのことを、試合のことを、そして広島のことを。
正直寿人を本当にサンフレッチェのエースとして受け入れるのには時間が掛かった。確かに点は入れるけどどこか印象に欠ける。それは久保竜彦のような驚くようなとてつもないゴールでもなく高木琢也のような欲しいとこで取るというゴールでもない。それを寿人を広島になくてはならないと感じさせたのは2006年シーズンだ。チームが連敗を重ねる中望月監督が指揮を執り90分の内に本当に1回しかないチャンスを決めるという信じられないような決定力は圧巻だった。よくあの試合展開で勝てたなという会話をしたものだ。俗に宇宙開発と呼ばれるふかすシュートを打つ日本人の多い中で寿人だけは純粋にゴールゲッターだった。
そもそもぼくが初めて寿人を見たのはまだデビュー間もないジェフ市原の頃であった。その時の印象はとにかくゴールを目指してる選手だということだ。自分がゴールできなくてもチームが勝てばいいと自信の決定力のなさを肯定するような風潮の目立つ日本サッカー界において貴重な選手だという気がした。その後どんなに活躍するかなと思ったがチームを渡り歩いてJ2仙台に行ってしまった。ただここでゴールを量産する。やっぱりゴールのできる選手なんだとJ1で活躍するのはいつなんだろうと人事のように考えてた。だから広島に来ると分かった時絶対に計算のできる選手だという確信はあった。ただ今までのサンフレッチェのスタイルとして大金をはたいて選手を獲得するというのはどうもしっくり来なかった。だから本当の意味で寿人を応援する気にはなれなかったというのが正直なとこである。
それなのに今や広島の顔だ。降格が決まった時も誰よりも早く絶対に昇格させると残留を誓ったしサポーターのコールに対しては胸のエンブレムに手をかざして応える。そしていつもゴールを狙うというストライカーとしての姿勢は決して崩さない。それでいて自分が点を取れない時守備やサポートに廻って見方を使おうとするプレーも見られた。そんな寿人なのだから負けても寿人は悪くないと言いたいとこだが点を取れなかった責任を投げつけてしまう。冷静になればよくやってると感じるのだ。でもやはりシュートチャンスで決めきれずに負けると寿人のせいだと思う。たった1度しかないようなチャンスにそれは酷な話かもしれない。
だが、そこまで決定力を期待するのもこの選手が非常にゴールを決めるのが上手い選手だという認識があるからだ。優勝争いをしてるチームでもいい、日本人FWにそこまでの決定力をサポーターが要求するだろうか。まあ確かにサンフレッチェが試合の中であまりのも決定機が少ないというのも無関係ではないがたった1度のチャンスにあれが決めれないと駄目だという目を向けられるだろうか。
移籍しようと思えば移籍できたはず。もっと人気のあるクラブでプレーしたいという欲望は選手ならあるだろう。こんなにサンフレッチェのことを想ってくれる、しかもレベルの高い選手がJ2にまで付き合ってくれる。ありがたい話だ。このありがたさを広島の人達は感じ取ってくれるのだろうか。
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