ナビスコカップ・アントラーズ戦~遅すぎた光
2007/07/15 ナビスコカップ 鹿島アントラーズvsサンフレッチェ広島 カシマスタジアム
鹿島に着いて確かに雨は降ってなかった。もう天気の心配をしなくて良さそうだったがスタジアムに入ったところで不穏な空気が流れる。試合前の腹ごしらえをスタンドの裏の廊下でしてたら突風が吹いてきた。何だ、この風は。外を見たら雨が降っている。その雨が風で舞う。そう、ぼくらはまさに嵐の只中にいたのである。台風は過ぎ去ってなかった。そのせいかみんなウォーミング・アップの時は応援の声が出ていた。ヤケクソだったのかもしれないが迫力があった。
スタンドに出るとそこはもう厳しい環境だった。雨粒が目に溜まり視界を遮る。もう何が行われているのか分からない。いや、少なくともサンフが攻め込まれているというのだけは分かった。ボールをちっとも前に運べない、ワンタッチパスを狙って全てカットされる、簡単にペナルティ・エリアに入り込まれてる、サイドにボールが来ても誰もゴール前に走り込まない、もう目茶苦茶だ。というより滅茶苦茶な天候だからシュートを打てば何が起こるかわからないのにシュートすら打てない。点を入れる気があるのか、ボールを奪う気があるのか、勝ち上がろうという気があるのか。駄目だ、駄目駄目。全てにおいて可能性がない。桒田に高柳は何をやってるんだ?ハンジェはサイドを崩されまくってるじゃないか。シュートを打たれる、失点する、情けない、いつもの展開だ。いとも簡単に3点も失ってしまった。普通にJ1のチームの中でこうも易々と3失点もしてしまうようなチームがあるだろうか。まるで失点は自分のせいじゃないとでも言いたそうなくらいDFが脆い。
後半に入って雨が上がるも依然として風は吹く。雨が降ってないだけマシな状況だ。3失点してからはもはやぼくも気力を失ってしまったが交代で入った柏木、平繁、槙野はゲームを変えた。それは本当にファンタスティックな動き、U20W杯でカナダから帰った3人は自信を深めたんだろうか、両チーム合わせても光ってた。こんなことならもっと早く出して欲しかった。ボールを奪い前を目指すというサッカーの基本とも言えることをこの若い3人がやってのけた。ウェズレイのゴールは平繁のトリッキーなアシストだ。そしてここから追い上げができそうだった。実際押していた。
しかし、タイムアップの笛が鳴った。あと5分欲しかった。時間切れだった。絶対勝てた。鹿島は露骨に時間稼ぎをしてた。でもその時間稼ぎにイライラを感じることはなかった。どうせプレーが再開するとまた攻めることができるというオーラがあった。そして試合は負けたがそれと同じくらいにこの素晴らしいサンフレッチェのサッカーが終わったことが残念だった。もっと観たかった。もっと早い時間に3人が出てれば結果は違った。そんな思いが試合後に挨拶に来た選手には拍手という反応でサポーターは迎えたのだった。あくまでも負けた試合、そして後半20分くらいまでのふがいない試合であったのでコールをすべきかどうか迷うとこであった。それでも引き上げる選手の背中に槙野の名前を叫ぶ人が何人かいたという光景だった。
「悔しいね、平繁なんてカナダで大して試合出てなかったんだから始めから出して欲しかったね」
悔しい。本当にそう表現することしかできなかった。ぼくらはスタジアムを後にしようとした時鹿島のヒーローインタビューが聞こえた。
「今日のように良い試合をやって次の試合も勝ち進みたいです」
良い試合をやった。相手にそんなセリフを言わしてしまった。それが一層悔しさを増した。せめてもうちょっと早く攻め込んで肝を冷やしてやりたかった。まあそれはそれで悔しいのだろうが。
最近のコメント