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サッカー観戦用のLINEスタンプ作りました。

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2023年12月 3日 (日)

福岡戦~3位確定

2023年12月3日 アビスパ福岡 vs サンフレッチェ広島 ベスト電器スタジアム

 

 最終節。勝てば3位が確定しACL2の出場の可能性が出てくる。ただ、クラブはもう出場前提で来季を見据えている。出場の限られてた松本泰志がスタメンに入ってるとこはそんな思惑を感じさせられるのだった。

 両ゴール裏はサポーターでぎっしりと埋められそれぞれのチャントがぶつかり合う中、試合は始まった。両者球際の攻防が激しい。それ故になかなかボールが落ち着かない。そんな中でもヴィエイラのポストから前を向く時間ができてくる。ただ、すぐに2人、3人と囲まれボールの行手を制限される。そして福岡がボールを掻っ攫うと一気に前線へとスピードを高める。右サイドを駆け上がるドリブル。佐々木が個で押さえつけるもそのゴールへ向かう姿勢には迫力がある。攻められてるようでいて実はカウンターを狙う。それがわかってるだけに迂闊に攻撃への比重を高めることができないのだった。

 そんなこう着状態の中で福岡が左サイドを突いてきた。迅速な戻りでエリア内を固めるサンフレッチェ。ペナルティエリアに入った紺野には佐々木がマーク。だがここで浮き球のパスを中央へ送ると山岸のとこへ。その動きへ反応した荒木がトラップ際をクリア。倒れる山岸。ボールはラインアウトしてプレーが止まるとVARが入る。荒木のキックが山岸の足に当たったかの検証がされる。まさかPKはないよな。でもその割には審議が長い。両者シュートまでいけてないこの試合は1点差で決まってしまう様相を呈している。PKは致命的だ。だけどボールへアプローチしているはずである。

 そして長い中断から示されたジャッジはノーファールだった。荒木のクリアが正当なものと認められたのである。助かった。まだシュートを打たせてないとはいえ紺野のボールコントロールは厄介だ。そしてトップの山岸は流石にJ1で2桁得点を決めるだけあって迫力がある。やはり早目に点が欲しい。後ろでパスを回しつつも左サイドのスペースを見つけると一気にボールを走らせる。フリーで持ち上がる。これはチャンスと息巻くものの深く持ち上がった時にはすでにゴール前を固められている。単純なクロスは跳ね返されて終わり。中央を崩そうとワンタッチパスを駆使していくも最後の壁が打ち破れない。硬い。福岡の守備はあまりにも硬いのだった。

 攻撃をしていく内にはセットプレーにもつながる。満田がFKからDFとGKの間を這うボールを蹴ったもののヴィエイラがそれに触ることができなかった。更にCKから佐々木が飛び込む。が、これをGK永石のパンチング。続いてのCKでは中野が枠に入れられい。ああ、やはり今日もセットプレーが決まらない。どうにもサンフレッチェの選手はヘディングで競り勝つことはできてもそれを枠に入れることができないのだった。

 何かを変えたい。そしてこの変えるキッカケとして松本泰志を下げエゼキエウを投入する。久々にチャンスを貰った泰志にとっては残念な交代であったろうがエゼキエウのドリブルはチームにいいアクセントを与えるのだった。

 前線が活性化したお陰でシュートチャンスも生まれてくる。川村がカウンターからのミドルシュート。これは枠に入らない。それでもエゼキエウが密集したペナルティエリアで巧みなターンからシュートを放つもこれも枠外。そしてオーバーラップしてきた塩谷がゴールライン際まで持ち上がりクロス。これもマイナスの軌道に待機してたのは福岡の選手。そこからまた勢いを持ったカウンターが始まるのだった。

 左サイドから縦へ抜けカットインからゴール前へスルーパス。が、この動きを読んでた佐々木がカットする。そこから右サイドへ預けることで今度はサンフレッチェのカウンター。が、勢いを持って上がろうにするも福岡の帰陣が速過ぎるのだった。

 それにより中野を下げ、東を下げてピエロス、志知と入れていく。ターゲットとしてピエロスを使っていきたいもののいい場所で受けることができない。ヴィエイラもシュートが打てない。それによりついに切り札を切ってくる。マルコス・ジュニオールの投入。だがここで満田がアウトというのは意外だった。残り時間も少ないことだしここはフレッシュな選手に委ねる手段で行ったのだった。

 左でつくって中盤へ出して中央突破をはかろうとするも上手くいかない。攻撃の時間は増えてきた。だけどフィニッシュが決まらない。そこを打開しようと加藤が単独でボックス内に侵入するもシュートはまたしても弾かれてしまった。依然、CKは続く。だけど簡単にクリアされる。ゴール前の隙のなさは尋常じゃない。2次攻撃、3次攻撃を続けるも壁は厚い。弾かれたボールはオーバーラップした塩谷が回収。そこからマルコス・ジュニオールへと渡されるのだった。

 ゴール前へ人数を割いてる分だけボールホルダーへのプレスは遅くなる、そこでマルコスは距離のあるとこからゴール前へクロスを入れる。密集したゴール前であるにも関わらず荒木が頭で触る。それがバックヘッドとなり、GK永石も反応できずゴールに吸い込まれていくのだった。

 決まった、決まった、決まった。正直荒木のヘディングはかすった程度だった。それでも荒木のゴールというのに間違いはなく、今シーズン初ゴールを決めたのである。競り合いには勝つのにシュートを決められないというのを繰り返してただけに最後の最後の試合で決めたのだった。

 すでに時間はアディショナルタイムに入っていた。こんん土壇場で決めるとは思わなかった。あと数分耐え凌ぎたい。福岡は屈強な外国人選手3人入れたことによりパワープレーで来るだろう。だがそんな単調な攻撃ではなくしっかりと繋いできた。そして最後ラストパスで跳ね返す。もはや時間は過ぎてるのに笛を吹かない。長い、長いアディショナルタイム。いい加減終了の笛吹いてくれよと思うも一向に鳴る気配がないのだった。

 じれるような時間は続く。もはや無理に繋げず最終列からはロングキック。無難なプレーで時間を進めるとついに終了のホイッスルが鳴り響くのだった。

 勝った、勝った、勝った。最終節を勝ちで終わることができた。これによって3位確定。ACL2に関しては今シーズンのACLでJクラブが優勝してしまうと事情が変わってくる。ただここで他のチームが負ければいいなどとは思わない。とりあえずは自力で3位で終えたことを喜んでいるのだった。

 開幕戦ではゴールを認められなかったし、天皇杯、ルヴァンカップでは早々に敗退してしまった。悪質なタックルで満田が負傷してしまうこともあった。そして加藤、マルコスの加入で得点力を上げることができた。いろんなことのあったシーズンであった。そしてそれを糧として来シーズンに繋げていきたい。そんなことを思いながら来シーズンは新スタジアムでどんなプレーを魅せてくれるのだろうと想像していくのだった。

2023年11月26日 (日)

ガンバ戦~幸せな形でのEスタ最終戦

2023年11月25日 サンフレッチェ広島 vs ガンバ大阪 エディオンスタジアム広島

 

 チケット販売完了。

 エディオンスタジオ最後の試合というメモリアルには多くの人が集まった。入場待ちの列は長く連なり背後の山まで続いていった。グッズ売り場ではほぼ整列が意味をなさないような混雑ぶり。3万人以上の席のあるスタジアムながら実際には2万人以上の来場に耐えられない。今更ながらこのスタジアムの限界が垣間見れた。

 そんな混乱の中、潤を追った入場により徐々にスタンドを埋めていく。いつもよりも時間は掛かったものの観客で埋まっていくとコレオが上がるとその光景は壮観だった。観客が多いからできた演出。最後にこういう光景を観れて気分が盛り上がるのだった。

 そしてスタメンに青山が入ってるアナウンスが入ると余計に気分が上がる。サンフレッチェを支えたベテラン、青山以外にも柴崎、柏がベンチに入っている。更に引退の決まったGK林までベンチにいる。スキッベ監督の粋な計らい。そこに長年応援してるサポーターは熱くなるものが体に走るのだった。

 割れんばかりのチャントの中でのガンバボールでのキックオフ。ロングボールで攻めてくる。単純にクリア。そのセカンドボールに反応してロングシュート。GK大迫のキャッチ。そしてここからのロングキックが川村に渡りシュート。遠目からの低い弾道のシュートは枠には入らなかったがお互いゴールへの積極性を見せた立ち上がりだった。

 ボールの寄せが速くアグレッシブに奪いにくるガンバ。それに対し軽快なリズムでパスを散らすのは青山だった。それがチームにリズムを与え最後列からのビルドアップも澱みなく進む。GK大迫から左の佐々木へ。縦へ送るとヴィエイラの落とし、それをフリック、縦のスペースへスルーパス。加藤が左のポケットに飛び出し中を伺う。カットインからのクロス。ゴール前に守備は揃ってるがそこに飛び込んだ満田。ピンポイントで捉えたヘディングがゴールの脇に入ったのだった。

 先制。コーナーポストに駆け寄るパフォーマンスの満田。スタンドからは満田のチャントが繰り広げられる。早い得点。流れるような展開であっさり決まった。それはチームの調子の良さを窺わせた。そしてそれを生み出したのは間違いなくスタンドを埋め尽くした観客の声援によるものだった。

 その声援はより一層ヒートアップしてチームを盛り立てる。そして再開後再び左サイドでボールが駆け上がっていく。今度は満田がポケットに入り込み東へと落とす。フリーで受けたもののゴール前は人数が足りてない。それでも入れた。左足のクロスはDFの壁に向かっていく。が、ここでファーサイドから駆け上がった中野が飛んだ。頭に当て叩きつける。入った。またしても左からのクロス。そして決めた中野はJリーグ初ゴールだった。

 湧き上がる歓声はとめどがない。打っても打っても入らなかった中野がこのホーム最終戦で決めた。それだけに単純なるゴール以上の価値があった。雄叫びを上げる中野。でもスタンドのサポーターもそれに負けない声を発するのだった。

 早い時間での連続ゴールで一気に優位な展開になる。相手に付け入る隙を与えない。いつもより選手が勇気的に動いてる。普段のパフォーマンスにバイアスが掛かってる。スタジアム一体となってこのゲームを動かしていくのだった。

 この為後1点取れると決定的だったもののそれが入らない。チャンスは作り出している。だけどあと一歩が足りない。シュートは打ってるもののボール1個分逸れてしまう。そこはガンバも最後の最後は複数人でブロックに入り枠に入れさせない。この雰囲気、この展開で止めを刺せないとこにガンバが粘り強さを見せるのだった。

 このままの展開で終わってしまうかもしれない。そんな中弛みを見せそうになったその時だった。中盤で満田がファールを受けるもプレーオン。その流れで川村が縦パス。バイタルエリアで受けた加藤。ゴールを向きコントロールショット。ファーに向かったボール。GK東口が飛びつくも届かず入ったのだった。

 決まった、決まった、決まった。3点目。これはもう決まった。後半の時間帯から言ってももはやこのゴールは試合を決定づけるものとなったのだった。

 もはやここまでくると攻撃姿勢は止まらない。勝敗に関わらず更なる得点を狙っていく。勢いは止まらない。その圧倒的勢いの中、青山に代わって柴崎が入るとスタジアムに拍手が響き渡る。まだまだやれることを示した青山に対して。そして柴崎を激励する意味でも。するとその柴崎が魅せる。サイドから入った横パスに反応してシュート。ガツンとポストに跳ね返される。あとボール1個分であった。惜しい。ただ、これにより柴崎もまだまだやれるのでは思わせるのだった。

 更にメンバー交代が告げられる。ピッチサイドに立ったのはGK林と柏だった。大迫が駆け寄りハイタッチによりピッチに入った林に割れんばかりの拍手が起こる。加藤に代わって入った柏も左サイドでカットインを魅せる。残念ながらそこでのコンビネーションが合わずカウンターを受けたことでサイドでFKを与えてしまう。ゴール前へ向かってのキックが入る。ヘディングで合わされた。が、そのシュートをキャッチ。GK林は無難に仕事をこなす。そして前線へ飛ばすことにより試合を終えるのだった。

 3-0の勝利。満員の3万人近いエディオンスタジアムの最終戦。ここでJ2降格もJ1優勝も味わった。そしてそれらの中にいた林が引退を発表しつつも最後にピッチに立つことができた。更にはその去就が不透明な青山はスタメンで責務を全うし、柴崎、柏も可能性を見せた。次節勝つことができればACL2への出場もあり得る。だとすると当然試合数増加により選手が足りなくなる。もしかしたらその為の見極めだったのかもしれない。そんな憶測ができるのも勝ったからこその余裕のなせる技だった。

 やはりこのスタジアムは満員に近くなると独特の雰囲気を醸し出すことができた。それだけに新スタジアムへの期待も掛かる。そんな中、試合後に林卓人の引退セレモニーが行われる。グッと胸が熱くなる。こんな形で選手生命を終えた林は幸せだったと思う。そしてそのセレモニーを観てるぼくらも幸せな感情に包まれるのだった。

2023年11月11日 (土)

札幌戦~北の大地でのスコアレスドロー

2023年11月11日 コンサドーレ札幌 vs サンフレッチェ広島 札幌ドーム


 温暖化の影響は北の地でも寒さをもたらせなかった。もはや日本に冬は訪れないのだろうか。そんな懸念すら抱いてしまったものの前日の雨が気温を一変させた。張り詰めたような冷気。乾いた風が吹けば寒さが一層身に染みるのだった。

 そんな厳しい気候であるが故にドームというのは一定の安心感をもたらした。少なくとも風が凌げるのはありがたい。階段を上りアウェイゴール裏に躍り出るとすでに紫のユニフォームの姿はあった。とはいえさすがに北海道であるが為に人数的には厳しいものがある。なのでなるべく集まって座るよう応援団の呼び掛けが行われるのだった。

 屋根のついたスタジアム。試合演出の音楽が鳴り響くが、やはり音響がいい。そしてサポーターの声も響く。お互いのチャントが渦を巻く中、試合は始まったのだった。

 攻撃的サッカーを施行する札幌を前から嵌めようとするものの上手くかわされる。そして両サイドが高い位置を保ちどんどん仕掛けてくる。時に浅野がスピードに乗ったドリブルで切り込んでくる。志知と佐々木の2人掛かりで止めるもその後の2次攻撃、3次攻撃が素早い。クリアをしても拾われる。まるでそれはどこにどうボールを蹴り込んでも事前にその場所を把握してるかのようだった。

 そんな相手の守備を切り崩す為に器用されたのがCBの山﨑だった。ところが山﨑のパスは読まれてしまう。ビルドアップのパスが引っ掛かる。ロングキックは収まらない。そのせいで守備の重心は低くならざるをえない。それが余計なこと札幌に前を向かせる。そしてフィニッシュまで持っていかれるのだった。ただ、その数々の危ない場面、GK大迫の安定したセービングによりなんとか無失点のまま前半を終えることができたのだった。

 後半の始まり、サンフレッチェの選手がピッチに出てくるのが遅かった。綿密な作戦指導があったのは想像に難くない。明らかに機能してなかったもののそこで人を代えるという選択をしなかった。そこを貫いたのはこのメンバーでやり切りたいというスキッベ監督の意思があったのだろう。加藤のワントップ、CBに入った山﨑をあくまでも使いたかったのだろう。

 相変わらず防戦一方のサンフレッチェ。プレスを掛けても巧みなボール捌きでかわされる。それによりまたしても重心は低くなるものの奪ってからのキックが前線の加藤に渡るようになる。そこで2人のDFを背負いながらも失わない。それがエゼキエウや満田の飛び出しを生んでいくのだった。

 エゼキエウがフリーでドリブルに入る。東が最前線がボールを収める。カウンターにより満田がドリブルで持ち上がる。そんな場面が続出する。ただ、その後がよくない。シュートが枠に入らない。満田のラストパスはDFに引っ掛かる。東に至っては相手を背負ったらシュートすら打たずに奪われる。ああ、その消極的プレーは脱力してしまう。前が空いたら距離があっても打とうという気概がどうして生まれてこないのだろうか。

 それ以後も攻める札幌に対してカウンターでチャンスをつくり出していく。だが決まらない。最後決める人がいれば。そしてとうとう志知に代えてピエロスが入るのだった。

 トップに入ったピエロス。それによりわかりやすいターゲットができた。中盤でピエロスが収めた。逆サイドへのロングキック。が、これが相手GKへのパスにしかならない。なんて適応なキックなんだと頭を抱えるも再び訪れた同様の場面ではちゃんと味方が走り込んでいた為チャンスへと繋がる。が、やはり最後を決め切るまでにはいかない。逆に札幌はサンフレッチェの守備を切り裂くパスが通りまくる。恐ろしくレベルの高いボール回し。追い詰めたと思っても適当に出したかのようなクリアさえ逆サイドに繋げた時、気が遠くなるのだった。

 エゼキエウに代え松本泰志が入り残り時間のスパートを掛ける。だが札幌は譲らない。それどころかサンフレッチェが攻めれば攻めるだけ食い止めることで自らのチャンスに繋げていく。それがボールを前に出す自制に繋がったのか、終盤に向けて攻撃を急がなくなってしまった。アディショナルタイムに入る。もう時間は残されてない。それにもかかわらずGK大迫はゴールキックを急ぐことなくゆっくりゆっくりセットするのだった。

 急げ、急げ。

 そんな声を出しそうになるもやはり急がない。そして佐々木がファールを受けてFKを得るもやはり一呼吸を置いていると鳴ってしまった。試合終了のホイッスルである。最後の最後に点を取ろうという気はなかったのだろうか。もしかしたら引き分けで御の字という計算が働いたのかもしれなかった。

 機能しなくても貫いたスタメン。これはある程度来季に向けた構想も入ってたのかもしれない。それ故に交代枠も2つしか使わなかった。加藤のワントップ、山﨑のCB。不安定な部分もありながらも試合で成長を促すのだろう。今や右サイドで完全なレギュラーとして定着した中野がそうであった。

 スコアレスドローには満足してない。むしろ可能性のあるシュートは札幌の方が打ってた。それでも挨拶に来た選手には拍手で迎えた。そのひと時に勝敗を超越した至福をもたらされるのだった。

2023年10月29日 (日)

FC東京戦~取って欲しい選手のゴールによる勝利

2023年10月28日 FC東京 vs サンフレッチェ広島 味の素スタジアム

 

 日差しの強い日だった。その分日陰に入るとひんやりとしていて時間の経過と共に日が傾いてくるとむしろ肌寒さを感じるようになった。この時期の寒暖差は激しい。だがアウェイゴール裏のエリアは満席となり熱き応援が繰り広げられる。そこには2022年以来勝ててないFC東京に対して今度こそはという想いも湧いていたのだろう。

 スタメンはヴィエイラとエゼキエウが入っている。この2人はジョーカー的な役割の方が合ってるような気がしてどうもこの采配は受け入れることができなかった。特にヴィエイラはスタメンだと点が取れない。時間の経過に伴って存在が空気になる。それだけに早い時間で決めてしまいたい。高い位置からのプレスで嵌め込んで行きたいのだった。

 ところが試合が始まると最初に攻め込んできたのはFC東京だった。CKを防ぐとセカンドボールをヴィエイラが収めてそこからチームが前を向く。ところが東京のチェックも鋭く攻め切ることができない。ハイプレスで嵌めようとするも東京は1本のパスで局面を打開する。それは前線にアダイウトンがいるのが大きかった。右サイドで受けるとスピードとパワーで切り込んでいく。それにより全体が押し上げることができゴール前へ入ってくる。守りの時間が多くなる。が、前掛かりになる為一旦ヴィエイラに入るとそこからカウンターに繋げられるのだった。

 高い最終ラインの東京。それだけに裏を狙う縦パスを送るも悉く最終ラインのトレヴィザンに蓋をされてしまう。それにより再び東京の攻撃に移っていく。ライン側でアダイウトンのドリブルから始まりバングーナガンデのオーバーラップ。ディエゴが最前線で収め仲川がドリブルで切り込んでくる。厚みのある東京の攻撃。だが簡単にはやらせない。最後を防ぐとカウンターにつなげる。左サイドを東が駆け上がりクロスを入れると加藤。ヘディングはGK野澤に防がれてしまったものの可能性のある攻撃だった。攻めているのは東京であるもののシュートが打ててるだけにそれほど悲壮感のない前半となるのだった。

 そして後半になるとサンフレッチェは攻勢に出た。相手のクリアを再び跳ね返し前線へ入れるとボールは浮き上がった落ち着かない展開に。ボールが飛んで飛んで地に着かない中、中野が最前線の加藤へ浮き球を入れるとトラップで反転。ゴールを向くとシュート。入った、決め切ったのだった。ボールが落ち着かない中、加藤のボールを収める技術、そして正確なシュートにより決め切ることができたのだった。

 先制。それは大きな自信となり勢いとなることができた。が、ここで緩んでは行けない。先制しつつも逆転された結果が東京との7試合未勝利である。追加点を取るべく攻勢に出る。その分後ろが薄くなるだけに東京はそこを狙ってカウンターに出る。奇しくも前半とは逆の展開になる。そして東京のカウンターに迫力があるのはやはりアダイウトンの存在が大きいのだった。

 フリーで受けたアダイウトンが縦に抜ける。チェックに行くもまるで無力化するかのように突き進む。そしてゴール前へのグラウンダークロス。仲川が中央に詰めている。それを背中に感じた荒木がスライディングで脚を伸ばす。先に触った。が、ボールはそのままゴールに跳ね返ってしまったのだった。

 オウンゴール。追いついてしまった。ただこのプレーで荒木を責めることはできない。クリアしなければ中川に決められていた。一か八かのクリアだった。むしろアダイウトンを止めれなかったことが問題だった。いつもいつもアダイウトンに決められる。ああ、アダイウトン、アダイウトン。

 勢い付いた東京は更に攻撃の厚みを増していく。だがサンフレッチェも火は消えていない。お互いに点を取りたい中でオープンな展開へとなるとエゼキエウがドリブルで左サイドを上がりクロス。加藤のシュートはDFのブロック。そして今度は中野が右サイドからのクロスはクリア。サイドを使っていくがこじ開けれない。むしろ人数を掛けた守備は尚更東京のカウンターを発動させやすくなっていく。そこを佐々木が身体をぶつけて取り切ると右サイドからの展開。中野がゆっくりと運んでいくのだった。

 中の満田に預けようとしたもののそこをカット。が、ルーズボールを再び拾った中野。満田に預けると中央のヴィエイラに出す。DFを背負いながらもワンツーで裏へ出すと飛び出した満田。GKとの1対1。ここをニアのわずかなスペースに流し込んでいったのだった。

 黄めった、決まった、決まった。満田のゴール。ボランチでの出場であるにも関わらずゴール前へ飛び出してのゴール。球際の競り合いでも優位を続け試合を決めるゴール。まさにスーパーだった。そしてこのゴールによりスタジアムの応援は一層熱を帯びるのだった。

 追いつきたい東京が押し込んでくる。バイタルエリアに入ったディエゴがDFを背負いつつも奪われない。じっくり溜めて溜めてシュート。GK大迫の正面。キャッチはできたもののあの体制でシュートまで持って来るのはやはり油断ならない。それだけに引きこもって守備に徹するよりも攻めることで攻撃の自由を奪うのだった。

 疲れの見えたヴィエイラとエゼキエウに代えナスと志知が入る。これにより相手のバックパスに追い込みを掛けることによりビルドアップの余裕を与えない。それでもCKからポストに当てるヘディングをかましてきた東京。まだまだ気は抜けない。7分というアディショナルタイムの表示に気が遠くなりそうだったが、もはやここまでくると時間稼ぎのプレーも入れて来るのだった。

 そしてタイムアップの笛が吹かれる。揺れるスタジアム。勝った。加藤、満田という決めて欲しい選手が決めたというのも高揚感を高める。マルコス、ピエロスがいない中でも点を取ったというのも大きい。シュートが入らないと悩んだ1年だった。そこに加藤と満田が最後のシュートへ精度をもたらせた。チームがもう一段上にいく為にもこの最後の精度を上げていく必要性を感じた。

 だがそんなことよりも今日この勝利に酔いたい。追いつかれての勝ち越し。こんな試合を観れただけでも興奮は収まらない。残された試合、こういう試合を続けてこの興奮をまた味わいたい。タイトルも何もない中、ただただそれだけを願うのだった。

2023年10月22日 (日)

セレッソ戦~崩れなかった均衡

2023年10月21日 サンフレッチェ広島 vs セレッソ大阪 エディオンスタジアム広島

 

 スタンドには工藤壮人をしのぶ弾幕が掲げられてた。

 ああ、そうか。工藤が亡くなったのはこの頃だった。そして昨年のこの時期はルヴァンカップの決勝だった。見事優勝を果たしたのは工藤の恩恵があったような気がした。ただ、先制したのはセレッソだった。そしてもはやこれまでというとこでピエロスの奇跡の2得点により逆転したのだった。その時セレッソで先制ゴールを決めたのが加藤陸次樹。そしてその加藤は今シーズンサンフレッチェに加入し停滞していた攻撃陣に活力を与えた。セレッソとの試合はいつも均衡したものとなり色んな面で因縁が付き纏うのだった。

 その厄介な相手にあるにも関わらずピエロスとマルコスの欠場のニュースが流れる。そしてワントップにヴィエイラが入ったもののどうもスタメンになると空気になる傾向があるのが不安だった。ただ満田がシャドーに入ってアタッカーになることによって欠点を補えるという目論見があったのだろう。が、そこはヴィエイラの空気感の方が優った前半となってしまった。

 前からのプレスは嵌らない。追えば追うほどセレッソはボールの引き出しを増やしていく。そして上手くGKまで下げさせたと思ったらGKキムジンヒョンのロングキックで一気に裏を剥がされる。右サイドクロークスを起点にカウンターに入る。そこからボックスに入り折り返される。またはクロスが入る。それらを懸命な戻りとGK大迫のセーブによって抑えたものの首の皮一枚で助かった。プレスに行けばかわされ追い込んだと思ったらカウンターへ繋げられる。まるで攻め手がなく後ろへ下がってブロックを敷くしかならない展開となるのだった。ただ、そこから奪っての前線への長いサイドチェンジには中野が上手く走り込んでいた。右サイドを駆け込んでクロス。セレッソのDFは戻りが速くブロックもセカンドボールを満田。ライナー性のミドルシュートはGKキムジンヒョンがガッチリと押さえつけるのだった。

 それが唯一あったチャンスだった。間違いなくセレッソの前半だった。そこでペースを変える為にボランチの野津田を東に代える。全体が押し込まれてる中、その交代は焼け石に水のような気がした。が、そこからパスが前線へと回るようになったのだった。

 最終ラインから中盤へ経て左サイド志知が高い位置で受けるとクロス。そこは不発に終わったものの明らかに前半には観られないシーンだった。ヴィエイラも中盤でのポストプレーに絡むようになり全体が前を向ける。バイタルエリアで受けた加藤が単独でDFを引き離しながらシュート。これもGKキムジンヒョンのセーブ。すると今度はセレッソが反転。右サイドを抜けて来るとカピシャーバのドリブル。そこにマークに着くもののスピードとパワーを持ったドリブルで押し切られる。中へ入れられるとカバーに入ったDFによりカット。よく防いだ。攻めれば反転される。かといって守りに徹すると逆に攻撃に勢いを与えてしまいそう。故に攻めるもののなかなかゴール前まで辿り着けないチャックの速さがあり例えフィニッシュにたどり着いてもGKキムジンヒョンの壁は突き破れないのだった。もはやこれは1点の勝負になる。そんな様相を呈してきた時、志知を下げエゼキエウを入れる。そしてその後にはヴィエイラを下げナスを入れるのだった。攻撃的なメンバー変更。これはまさしく点を取れというメッセージだった。

 お互いに勝ちに向かう中でオープンな展開に。中盤にスペースができエゼキエウへ縦パスが入る。最終ラインを前にしてシュート。が、これをGKキムジンヒョンが止める。そして今度はセレッソが左サイドから侵入してくる。縦を塞ぐとカットイン。シュートコースを切ると更に中へ、中へ。2人、3人のブロックが追いつかずシュート。GK大迫、片手一本で防いだ。両者、最後の最後はGKが止める。崩れない。最後の砦はどちらも崩れないのだった。

 少ない残り時間。攻撃参加に上がった塩谷がボックス内縦へ抜ける。クロスを送るもクリアでCK。満田の蹴るボールはこの日どれも不発。時間がない。そして今度は逆サイドのCK。これに飛び込んだ荒木。が、バーを超えてしまう。荒木のヘディングはやっぱり入らない。あとひと突き、このあとひと突きが限りなく硬いのだった。

 そしてこのままタイムアップ。スコアレスドローの結果に両者へたり込む。最後のひと突き、やはりそれを考えるとピエロスとマルコスの欠場は大きかったかもしれない。それでも右サイド中野はこの硬い試合において長いランニングから大きなチャンスを創り出したし加藤は球際での粘りを見せた。願わくばそれらのプレーに対して続きのプレーがあったらよかったのだが。

 勝ちたかった。引き分けといった結果には満足はしてないもののそれでも気炎の立ち昇るプレーの数々は熱くさせてくれた。これを勝ちにつなげるもの。シーズン終了が近づく中、来季に向けてその解答を下す時期に差し掛かってるのを意識してしまうのだった。

2023年10月 1日 (日)

名古屋戦〜采配が的中した逆転勝利

2023年9月30日 サンフレッチェ広島 vs 名古屋グランパス エディオンスタジアム広島


 雨上がりにより濡れたピッチが照明の光の反射を受け、夜空とのコンストラストが神秘的だった。そんな中での選手紹介。名古屋にはサンフレッチェから移籍した稲垣、野上、森島が揃って名前を連ねていた。因縁の対決。だがそれ以上に存在感を放つのが長谷川監督だった。この監督はなぜかサンフレッチェの障害となる。どこのチームに移っても大きな壁として立ちはだかるのだった。

 上位の成績で終わりたい故に勝ち点3がほしい。その為のスタメンは前節と同じ。無得点で終わった前節の借りを返したい。前線のピエロス、マルコスはスタートから高い位置でのプレッシャーを続けるのだった。

 それにより名古屋の押し上げを阻止していた。低い位置でのボール回しにプレッシャーをかけ続ける。が、テクニックのある名古屋の選手は個で裏返すと前線へ一気に当ててくる。が、最終ラインがクリア。相手の攻撃を食い止めることにより再び前を向くことができるのだった。

 そこまでは上手くいってる。が、名古屋のDFはゴール前へ鍵を掛けるのも速い。更にカウンターの場面が訪れるもトップのピエロスのプレーがいつも中途半端になることでフェードアウトしてしまうのだった。打てばいいとこを打たない。前線のポストプレーではボールを収めきれない。そして左サイドから志知がクロスを入れたとしてもターゲットとして機能してない。ああ、ピエロス。絶対的エースになると思ってた期待はもはや幻想なのだろうか。だがそんな嘆きを感じてた時、サイドを抜け出しシュート。逆サイドへ入れる。飛び上がるサポーター。が、オフサイドの旗が上がってしまう。ああ、惜しい。だがオフサイドとはいえシュートまで辿り着いたのは希望でもあった。

 そしてシュートシーンはもう一度訪れる。最終ラインでターンしてシュート。決まった。今度こそ決まったと思いきやこれもオフサイド。それならばと川村が遠目からのミドル。が、これもバーをぶち当て跳ね返る。あともう少しのとこで決めきれない。だが今度はこぼれ球をミドル。直線的なボールがゴールに突き刺さる。決まった。これは文句ない。と思ってたらまたしても副審の旗が上がってる。オフサイド。どうやらピエロスが出てたようだ。ああ、ピエロス。せめて味かたのシュートは邪魔しないでくれと嘆くのだった。

 一進一退。どちらも譲り合わない展開でありながらもどちらかというとサンフレッチェの方に有利に傾いてる。その為か、ハーフタイムを挟んでもメンバー交代はなかった。その一方名古屋は代えてきた。前田、森島に代えて永井、内田である。永井、これが厄介だった。スピードを使って一気に窮地に追い込んでくる。攻めれば攻める程守備を固め奪ってからのカウンターが効きやすい。嫌な予感がした。そしてその嫌な予感は具現化されるのだった。

 固く閉ざされた守備ブロックに絡め取られるとロングボールで一発を狙われる。だが競合いでは荒木が全てクリアしてしまう。ところが生半可足元に入ったボールだったが為に一瞬処理が乱れた。それを見逃さなかったユンカー。ボールを掻っ攫うとそのままゴールまで一直線。荒木が追走するも身体を入れられた。GK大迫が飛び出す。するとそれを見越したループシュート。ふわりと浮いたボールがゴールへと落ちていく。実にゆっくりとした弾道。それを無情にも眺めるしかできないのだった。

 失点。なんと落ち着いた対応。ユンカー。またしてもユンカーである。この選手にはいつもやられる。どんなにマークについてようが一瞬の動きできめてしまうことに気が遠くなってしまうのだった。

 もはやこの試合は決まったかもしれない。同点にすべく前がかりに出るものの完全に名古屋にとって都合のいい展開になっている。そこを打開すべくメンバー交代。ピエロス、マルコスに代わってヴィエイラ、エゼキエウである。ピエロスはともかくマルコスは受けて捌いてのプレーができる為勿体無い気がした。が、エゼキエウは単独でボールを持ち上がるプレーを見せ、ヴィエイラはポストプレーで前線を活性化する。それにより名古屋の守備の城壁が揺らぎ始めた。ただそれでも決壊さすまでにいかない。そこで交代を告げたのは中野、志知の両ウィングだった。

 確かに両翼が突破できなくなっていた。クロスが上がらなくなっていた。それでも守備で破綻させることはなかっただけに安定はしていた。代わって入った越道と東、これは博打的でもあるのだった。

 すると早速右サイド越道にボールが入る。マークに着かれる。凍りついたような間があった。が、一瞬にしてギアを上げ抜け切る前にクロス。ゴール前へ勢いのあるボールがスワーブ。そこへ飛び込んだのが加藤。脚を伸ばして当てるとゴールネットに刺さった。今度こそオフサイドもない。

 決まった、決まった、決まった。同点。越道ファーストタッチでアシスト決めてしまった。そしてそこに合わせた加藤。正に電光石火のような鋭さだった。

 盛り上がりスタジアム。応援のコールが一層熱を帯びる。この機に畳み掛けたい。名古屋も点をとりに来た。その分スペースが空きオープンな展開になる。左サイドでのショートパスがこ気味よく回る。それによりヴィエイラが抜け出した。完全に打てる。その時倒れた。後ろから捕まれてしまったのだった。

「ファールだろ!」

 誰もがそう叫んだ次の瞬間主審からPKのサイン。そこに色めき立つ。蹴るのはヴィエイラ。いつも左に蹴るがGKランゲラックは読んでるだろうか。そしてスタートのホイッスル。間を置いた助走。蹴った瞬間ランゲラックは左に飛んだ。が、ボールが飛んだのは右。見事逆を突いて逆転に成功したのだった。

 ドワーッと揺れるスタジアム。ヴィエイラのチャントが鳴り響く。勝てる、勝てる。あとは耐えればいい。だがダメ押し点を決めたい。そして勝ちを確固たるものとしたい。そんな熱気に包まれ勢いはますますヒートアップするのだった。

 右サイドにボールが渡る。迷うことなく縦へ抜けクロスを上げた越道。ゴール前を横切るボール。逆サイドから加藤が打つもブロック。ルーズボールが飛ぶとエゼキエウの頭。GLランゲラックも間に合わず入ったのだった。

 追加点。2点差。勝利に向かって大きく大きく前進。左右に振れた中で最後のフィニッフュは正に稲妻だった。技術がありながらどこか結果が残せないでいたエゼキエウ。ここで決めた追加点は非常に貴重なゴールでもあるのだった。

 交代による采配が全部当たった。だがそれはスターティングメンバーがそこまでの布石を打っていたものでもあった。長谷川監督の上を行けた。それは岩壁を突き破ったかのような爽快感がある。このまま試合を終え3-1での逆転勝利。前半オフサイドにより何度もゴールを取り消され味方のミスによる失点。そこから盛り返したこの勝利。それぞれの選手が持ち味を出しそれぞれが結果を出す。そんないい循環をシーズンを通して観たかったもののせめて残り試合だけでも爪痕を残して欲しい。少しでも上の順位。曖昧な目標ながらもそこに想いを馳せながらも幸福感に酔いしれるのだった。

2023年9月17日 (日)

神戸戦~リベンジを果たした勝利

2023年9月16日 サンフレッチェ広島 vs ヴィッセル神戸 エディオンスタジアム広島

 

 3試合連続の2万人越え。当初そんな観測もあったものの蓋を開けてみれば1万8千人と僅かに届かない観客数だった。ただそれでも多く入った方であり、その数字に貢献してくれたのはアウェイ神戸のサポーターがたくさん詰めかけてくれたからだった。地理的に近いというのもあるものの、首位を走る神戸にしてみれば1試合1試合目が離せない。しかも元スペイン代表のマタの加入は更にチームを熱くするのだった。

 そんな神戸に対して前回対戦ではっきりと力負けをしてしまったサンフレッチェ。前線の大迫、武藤には個で押し切られてしまった。更にウィンガーに位置する汰木にはドリブルでスカッと抜かれて決められたこともある。元代表選手を多く抱え改めて豪華なメンバーである。ただ、サンフレッチェも前線は変わった。あの時との違いを見せてやりたいという気運に駆られるのだった。

 両者のチャントの鳴り響く中でのキックオフ。サンフレッチェは前線からのプレスを敢行する。ただ神戸もここは織り込み済みでここを回避して裏返すという狙いがあるのは明白だった。そこの駆け引きでどちらが上回れるかだがサンフレッチェの推進力は勢いがあった。パスが連動しそれを追い越す選手がいることで更なる縦への推進力が生まれる。それに対して大きなクリアで対処する神戸だったもののそこも佐々木や荒木といった最終ラインが跳ね返すと再び中盤でボールが持て右に展開。ライン側で受けた中野。折り返しと見せかけるも縦へ突破。相手が追いつく前にクロス。ゴール前の山を越えていった。が、外に待ち構えてた志知。胸トラップからのボレー。逆サイドに刺さった。強烈なシュートが突き刺さったのだった。

 先制。早い時間の先制である。最高の出だし。神戸にリズムが出る前に仕留めた。志知はサンフレッチェでの初ゴール。そしてそこにクロスを送ったのが右サイドの中野。両ウィングにより仕留めたのは長らく課題だった両サイドが機能してないという問題の克服でもあるのだった。

 幸先のいいスタートを切ったもののこれで安心できるほど神戸は脆くない。有利に押し進めていてもそれを打開する個の力を持っている。常に前線にターゲットとなる選手がいるというのは大きい。ただロングボールに対しては荒木、佐々木が常に跳ね返してしまう。そこの競り合いで負けないというのは心強い。そして大迫に入ると2人、3人とで詰めてマークにつく。が、大迫はそんな人数を掛けたプレスでさえ掻い潜ってしまう。もはや日本人離れしている。今でもヨーロッパのクラブでもスタメンを張れる実力がある。相手としては脅威であるがこういう選手がJリーグにいるということに胸踊ってしまうのだった。

 それでもサンフレッチェの帰陣の速さは神戸の攻撃の自由を奪いシュートブロックからカウンターへと繋げていく。マルコスに出すとボールを奪われない。そして前線へ出すとヴィエイラが収める。これらが前線への推進力を高める。そしてシュートを放つもそこは神戸も守備が固い。素早い寄せでコースを塞いでしまうのだった。

 ただそうやって何度かカウンターに繋げたことは神戸の攻撃に過度な慎重さを与えた。バイタルエリアに入っても容易に縦パスを入れない。どとこなくこの日のサンフレッチェの守備網には穴がないように思われる。そしてサイドから打開しようと汰木がドリブルで抜きにかかるもののここを中野が防ぐ。昨シーズンここをスカッと抜かれてやられたことを思い返される。ゴール前での大迫、武藤に自由を与えない。それにより再び攻勢出ることができるのだった。

 中盤から右サイド中野へ。今度は縦へ行かず折り返す。フリーで受けた満田が持ち上がる。ミドルを狙うのかと思いきや前線へ角度のないクロス。最終ラインの混戦に入った加藤が飛ぶ。GK前川の逆を突くヘッド。ワンバウンドして入った。ファーサイドに決めることができたのだった。

 追加点。そろそろ加藤のゴールが観たいと思っていたところで決めることができた。常にハードプレスを行いいて欲しいとこに顔を出し黒子にも徹することのできる加藤は自身のゴールがなくとも貢献度は大きい。それだけに個人としての数字を上げて欲しかった。そんな時に崩さない中でのゴール。こういうゴールを決められると相手の守備は混乱を与えられるのだった。

 前半の内に2点差。このままハーフタイムを迎えたい。が、反撃に出る神戸に対して激しい守備がファールとなってしまいFKを与えてしまう。ボールをセットする大迫。巨木のような太腿から繰り出すキックは恐ろしい弾道を生み出す。が、これを壁に入った佐々木がクリア。無事無失点で前半を終えるのだった。

 ほぼ完璧と言っていい前半。それだけに後半の神戸の巻き返しが恐かった。すると後半早々に2人のメンバー交代をやってきた。これでペースが変わるかもしれない。当然最初から攻撃へと重心を傾けてくる。ゾーンを敷いて守備を固める。不思議なことに調子の悪い時期には人数が揃ってもスカスカだった印象のブロックがとてもソリッドなものに感じられる。それにはマルコスや加藤の攻撃陣の守備の参加もある。だが志知や中野の両サイドが破綻しないのも大きい。そして真ん中はガッチリと鍵を掛け一度ボールを奪うと塩谷はドリブルで剥がしていき守から攻へ転ずる。それができることによって神戸も思い切った攻撃ができないという流れになるのだった。

 このまま時間が経つことを願いつつも神戸は切り札のヴェーチェイを入れ、そしてついにマタを入れてきた。その実績に敬意を示しつつもこの流れを止めたくはないというとこで神戸のCK。キッカーはマタ。大きく上がったボールは急降下を描きピンポイントでクリアできないとこに落としてくる。それにより神戸の攻撃は続いていくのだが交代で入った松本泰志も越道も最後の最後まで粘りを見せる。そして同じく交代で入った東は相手のパスをインターセプトからゴールに向かう動きに繋げる。ヴィエイラに代わって入ったピエロスも最後まで走って相手にプレッシャーを与える。そして時間が進んでいく中最後に汰木のドリブルからのパスをボックス内で塩谷がカット。そこで響いた。終了のホイッスルが吹かれたのだった。

 2-0。無失点での勝利だった。前回対戦と逆をいくスコア。見事リベンジを果たした。この結果はやはり両サイドが機能したのが大きい。右の中野がクロスを入れて左の志知決めた先制点。そして再び右から突破を図るかと見せて中盤に返したことで加藤で中央で決めた追加点。少し前までどこからも手詰まりだったチームが点を取るヴァリエーション得たことが実感できるのだった。

 首位のチームに勝った。これはチームに勢いをもたらす。累積警告で出場できなかった川村の穴は野津田が全うした。そしてスタメンで出るとどうにもインパクトの残せなかったヴィエイラが存在感を見せることができた。そして交代を告げられた選手が皆物足りなそうな表情でピッチを退き入った選手はそれぞれに試合を完結させることができた。このいい流れ。このまま続くんじゃないだろうか。そんな期待に酔いしれてしまうのだった。

2023年9月 3日 (日)

鳥栖戦~充足感に満ちた勝利

2023年9月2日 サガン鳥栖 vs サンフレッチェ広島 駅前不動産スタジアム

 

 鳥栖のスタジアムは閑散としていた。それが上位でも下位でもない無風地帯にいる緊張感のなさによるものなのかはわからない。だが中位という意味ではサンフレッチェも変わりはしない。そうなった大きな要因はアウェイで勝てなかったこと。7戦連続未勝利である。この流れを断ち切りたい。そんな想いで乗り込んだもののスタメンに驚いた。不動の3CBの真ん中が荒木ではなく山﨑なのだった。その意図が窺い知れない。今まで山﨑の出場した試合では守備のぬるさから失点したシーンが思い起こされる。致命的な守備の決壊への不安が湧き上がってしまうのだった。

 だがサンフレッチェボールでキックオフされた試合は大きな山﨑の蹴り出しを序章に前線の攻撃陣がボールを収め連動した攻撃を見せるのだった。鳥栖も最終ラインで跳ね返す。だがセカンドボールは奪い再び前を向ける。ボランチに入った満田が前線のスペースに放り込む。左に流れながらマルコスがヘディングで中へ。そこへピエロス。ダイレクトで当てるとそのままGKパクイルギュの脇を抜けゴールに入ったのだった。

 先制。開始わずか3分。幸先がいい。相手が守備を整える前に攻め切ったことが仕留めるに至った。これは勢いづく。追加点を狙っていきたい。そして実際この後サンフレッチェの一方的な展開が続いていくのだった。

 その快進撃の中、相手DFラインを切り裂く縦パスが満田から出る。最前線で収めたピエロスはDFを交わしながらもシュート。ファーサイド頭上を狙ったシュートで軌道もいい。が、これをGKパクイルギュがパンチング。その後幾度となくパクイルギュの好セーブによって阻まれてしまうのだった。

 右サイド中野も攻撃の色彩を強め高い位置でボールに絡む。そこからの展開で川村が中央を切り裂く。DFに阻まれながらも抜け出しシュート。これもGKにブロック。跳ね返りを左に展開して再び川村が受けクロス。こぼれをゴール前に詰めた中野がシュート。が、これもGKパクイルギュに止められてしまうのだった。いつ点が入ってもおかしくない状況が続いている。それなのに点が入らないのは最後の牙城として聳え立つGKパクイルギュの存在が大きかった。

 そう考えると開始直後に先制したのは大きかった。だがそれだけに早く追加点が欲しいとも言える。これだけ攻め込んでいても仕留めることができない。1点ではどこで何が起こるかわからない。そんな時中野が右サイドを突破した。サイドを駆け上がるとクロスではなく中へ折り返す。そこから中盤への落としで相手をいなすも飯田主審に当たる。だがそれでも左サイドに展開すると志知がフリーで受け絶好機へ。するとここで笛で止められた。主審に当たってドロップボールという判定だが納得はいかない。サンフレッチェとしては止めてほしくなかった。その止めてほしくなかったタイミングで主審のせいで止まったのだった。

 そんな絶好機を潰された後、波が鳥栖に行ってしまった。それまでほぼワンサイドゲームだったにも関わらず鳥栖のボールが奪えなくなってしまった。サイドに追い込むも粘り強いキープからボールを出されると裏返される。それによりフリーの選手が生まれどんどんゴールに近い位置に押し寄せてくる。圧倒的に右サイドが狙われる。中野が1対1で対応する場面が増えてくる。そしてシュートを撃たれるも枠には飛ばなかった。中は十分締めている。山﨑の入ってるCBは崩れることはなかった。が、明らかにこの流れの悪くなったのは主審がプレーを止めてからだった。そこから鳥栖にスイッチが入ってしまったのは間違いないことだった。

 後半に入り仕切り直し。それでも流れは若干鳥栖に傾いている。チームの重心が低くなる。DFに戻されたボールにはピエロスが食らいつくも引き剥がせない。それでも右サイドに流れた加藤にボールが入ると相手の寄せもフィジカルで跳ね除けることにより持ち上がりが生まれる。それにより全体に押し上げが生まれる。こういうとこが加藤の利点であった。単純なパスワークだけに頼らず個での打開ができる。そこで再び息を吹き返すもフィニッシュに至らない。その為にピエロスからヴィエイラへとワントップの交代を行いターゲットを据えるのだった。

 すると右サイド中野が切り返しで相手マークを外す。ゴール前の最終ラインへ向けてクロス。大きく弧を描いたスワーブしたボール。そこに当てたのがヴィエイラ。頭でファーへ流し込む。GKパクイルギュが飛びつくも追いつかずバウンドしたボールが入ったのだった。

 決まった、決まった、決まった。跳ね返され、跳ね返され、跳ね返された最後の牙城をやっと突き破ることができた。そして久々のヴィエイラのゴールだった。勝てない時期、もはやヴィエイラは終わったかと思っていた。それでもこうして決める時は決める。やはりこうやってジョーカーとしての役割が一番生きるのを改めて認識させられるのだった。

 2点差にしたことでかなり有利になったことでもはやイケイケムードとなる。すると中盤からの縦パスを最終ラインで受けた満田がターン。そのままゴールに向かう。そしてGKと1対1。そこを巧みな溜めからGKの動きを誘いシュート。見事仕留めたのだった。この3点目に歓喜する。が、VARの干渉。絶妙なタイミングだと思ってた満田のターンはオフサイドの判定が出てしまったのだった。

 トドメを刺したかと思ったもののこれで余裕はなくなることでヴィエイラはサイドでボールキープの時間稼ぎをする。2人に詰められるも上手くスローインに逃げる。そしてそのスローインも再びキープからスローインへ。こういう時のヴィエイラは本当に頼りになる。そして最後はCKにすることでタイムアップ。0-2で終えることができたのだった。

 アウェイ8試合ぶりの勝利。しかも山﨑が出場したことで経験も積むことができた。同じ今シーズン加入の中野も縦への意識が強く観られシュートを打つ場面も観られた。チームに上積みができ、大きな1勝と充足感に満ちることがきるのだった。

2023年8月28日 (月)

柏戦~妥当なスコアレスドロー

2023年8月26日 柏レイソル vs サンフレッチェ広島 三協フロンテア柏スタジアム

 

 暑い、暑い、暑い。スタジアムへ向かう行路は残暑の熱に消耗させられる。その為、なるべく直射日光を避けるべく民家でできた影を通る。ただこうやって日陰が見つけやすくなったのは季節が確実に秋に向かっているからだった。それなのに弱まる気配のない気温にやるせなさを感じるのだった。

 スタジアムに着きゴール裏の立ち見エリアに入ると密集した人の体温で尚更熱は篭っていた。風を感じることもなくそれはピッチの上も同様であるはずであり、ハイプレスをするサンフレッチェにとってキツイ試合となるのは想像できた。しかも柏はカウンターや縦への速い攻撃を仕掛けてきていささかサンフレッチェにとっては噛み合わせの悪い相手であるなどと仲間と話していたのだった。

 メンバーの発表。累積警告によって出場停止の野津田に代わってマルコス・ジュニオールが入ってる以外には前節と変わりはなかった。が、こういう時に限ってボランチに体調不良の選手が出てしまった。不思議なことにこういう時必ず同ポジションの選手が出場できなくなる。その為アタッカーとして使いたい満田をボランチまで下げなくてはいけなくなった上にそこでの後退枠がないという事態に陥ってしまったのだった。

 そに為にも早目の得点が欲しい。体力の持続、ボランチの交代要員の欠如、切り札であるはずのマルコスをスタメンで使ってるという面においても前半の内に決めてしまいたい。そんな中でのキックオフだった。

 いつものように前からのプレスにはマルコスも献身的に走る。ピエロスも陸次樹も走る。それにより柏に自由なボールコントロールは与えなかったもののかと言ってサンフレッチェも有効な手立ては打ててない。特に左は閉じられてしまいその分右サイドへと展開される。右サイドの中野はフリーで受ける場面がありながらも効果的な攻撃を仕掛けることができない。そこにジエゴが相対するとことごとく負けてしまう。なので詰められる前にクロスを上げる。が、中で合わせる選手は皆無なのだった。

 そこからも硬直状態は続くもやはり狙われるのは中野のサイドであった。ただそこには塩谷がカバーをする上に最後にはGK大迫が守護神として君臨することで得点を許さない。相手の動きを予測してトラップ際を狙う。そんな守備が功を奏して速攻に向かう場面もできた。が、最後に右サイドに振ると中野はシュートを外す。ミドルシュートは枠の外。ヘディングはバーの上。そして最後はグラウンダーのシュートでは相手DFのスライディングで止められ決め切ることができない。決定力のなさを露呈した中野。だが皮肉なことに他の選手はシュートを打つ場面すら作れてない。もしかしたら柏もある程度守備を左に寄せていたのかもしれないのだった。

 スコアレスのまま前半終了。どちらかというと決めきれなかったという印象が強い。ワントップのピエロスはシュートを打っただろうか。何処と無く空回りしてる気がしたがやはり後半ヴィエイラと交代した。エンドを替えこちらへ向かって攻撃してくる。向かってこい、向かってこい、そんな気炎を込めゴール裏は声援を強めるのだった。

 長身のヴィエイラがターゲットになることにより前線での収まりができてきた。そこから展開することにより選手の押し上げが図れる。前半沈黙してた左サイド志知がボールを持てる。縦へ突破してクロス。が、中で合わない。そんな場面が何回か続くもクロスの質が悪い。相手GKへのパスじゃないかという緩いボールに愕然としてしまうとそれ以後はクロスも上げることができなくなってしまうのだった。

 選手交代でどんどんフレッシュな選手を入れる柏。そのスタミナを生かしどんどん押し上げの地力を得てきた。段々と防戦一方になるサンフレッチェ。左サイドをドリブルでえぐられクロスを入れられる。ゴール前で弾く。そしてシュートにGK大迫が食らいつく。果敢な飛び出し、ハイボールの処理に救われる。そこに安堵しながらもピンチは続く。それに耐えきれず山﨑を投入して塩谷をボランチに上げることにより安定感を取り戻す。再び攻勢に出たい。が、時間はあまり残ってないのだった。

 マルコスに変わったナスが完全に抜け出しゴールに突き進む。が、そこからシュートまで辿り着かない。残念なことにナスは左足でシュートが打てない為に切り返しをしてしまう。それが守備の戻りを招き行き詰まりを招く。あそこでもたつかなければ。得点力不足の理由の一端を見せつけられたのだった。

 両者共にピンチもありチャンスもある展開ながらいつの間にかアディショナルタイムに。あと少し、あと少しで辿り着きそうで辿り着かない。選手の消耗は激しい。ゴール裏の声援は一層熱を帯びる。ピッチ上に気炎が昇っているかと見紛うその奮闘にタイムアップの笛が鳴り響いた時、一瞬でスタジアムに静粛が訪れたのだった。

 勝てなかった。そんな落胆もあったもののよく無失点で抑えられたとも思う。それだけ際どいシュートもあった。なのでスコアレスドローは無難な結果だったかもしれない。頭ではわかっているもののやはりゴールが観たかったという想いは抑えることができないのだった。

 交代枠を全部使えばよかったのかもしれない。でもこのハードな展開についていくにはベンチのベテラン勢には厳しいという懸念が浮かんだのかもしれない。実際に塩谷がボランチに上がっただけに戦況を持ち直したというのもある。難しい。難しいが挨拶に来た選手には惜しみない拍手が送られるのだった。暑く熱い戦いは結果にもどかしさがありながらも讃えることができるものであったがそれはもしかしたら柏も同様だったかもしれない。妥当なスコアレスドローであったのかもしれないのだった。

2023年8月20日 (日)

川崎戦~9戦ぶりの勝利

2023年8月19日 サンフレッチェ広島 vs 川崎フロンターレ エディオンスタジアム広島

 

 8戦勝ちなし。

 川崎との対戦成績である。その屈辱的な記録は川崎にサンフレッチェには勝てるという余裕を生ませほぼ一方的な試合になることが多い。川崎には勝ちたい。それはこの数年間の痛烈なる願いだった。その為の駒として満田が怪我から復帰してきた。ピエロスもコンディションが整ってきた。更にストライカーとして加藤陸次樹の加入心躍るとそれで止まらなかった。なんとマリノスからマルコス・ジュニオールが電撃移籍したのだった。アタッカーが不在のチームにあってこれは大いに活量を与えることであった。

 ただ、流石に合流したばかりとあってスタメンにマルコスの名前はなかった。それでもキックオフされると満田を中心に前線からのプレッシャーが嵌まる。ピエロスも最前線でボールへのアタックを繰り返す。そしてシャドーに入ってる加藤もハードワーカーな為に相手を押し込むことに成功する。するとCK。満田がセットしインスイングのボール。ゴール中央へ落ちるとピエロスがボレーで合わせた。ゴールに叩き込まれ先制点となった。

 「ピエロス、ピエロス、ピエロス!」

 数試合前までやはり獲得は失敗だったのではと疑念を抱いてたピエロスは立派に結果を出したのだ。これぞピエロス。セットプレーでのゴールのないサンフレッチェにとってこlれは非常に意味のあるゴールとなるのだった。

 この先制点で押せ押せとなる。更に前線から追い込みを掛けると川崎はテクニックを使ってボールを奪われない。プレスを潜り抜け、潜り抜け、潜り抜けると右サイドへの長い縦パス。スペースに抜けたボールに瀬川が追いつきドリブル。懸命に追う塩谷。しかしペナルティエリア深く切り込まれるとゴールを横切るラストパス。そこに飛び込んだ脇坂。ダイレクトで合わせられ同点を許してしまう。サンフレッチェが力技で決めたのに対して相手の裏を突いたいやらしい得点である。ここでこうやって易々と同点にされてしまうとこにまたかという想いがあった。

 ただ、そうであってもそこに悲観はなかった。振り出しに戻っただけ。そんな割り切った感覚になれたのはサンフレッチェが後ろ向きにならなかったせいである。そしてこのまま後半に入っていくと野津田に代わってマルコス・ジュニオールが入るとボルテージが上がった。実績のある選手だけに期待は大きい。スタジアムも湧き上がった。そして前線でのスペースを見つける動き、マークを着かれても失わない技術、周りを生かす球捌きでチームに再びギアを入れる。マルコスが入って明らかにペースが変わった。東から受けた縦パスをターンしてクロスを入れると加藤が飛び込み。そのシュートは枠には入らなかったもののいきなりの決定機の演出にスタジアムは更にヒートアップする。そして今度は右サイドに流れることで中野への落としを生みクロス。ゴール前でボールがこぼれると加藤が詰める。切り返しから決めれると思ったそのシュートはGKチョン・ソンリョンに止められる。あとちょっとだった。マルコスが入っただけで立て続けにチャンスが演出されるのだった。

 とはいえ最後の最後は締めてくる川崎の守備の手堅さを感じてもいた。この最後の壁をどう突き破るのか。左サイド志智にボールが入った時、追い込まれ行き詰まったかに思えるも東のサポート。そこからマルコスに出すとすぐに囲まれる。ターンしてかわす、かわす、かわす。4人ものチェックを外しそこからどう展開するかと思ったその時打った。速い弾道のボール。ファーサイドへ向かうとゴール片隅に突き刺さった。

 入った、入った、入った。ゴール、ゴール、ゴール。まさかあの状態で打つとは思わなかった。意表をつけたのは高い技術とシュート力である。こういう選手が欲しかった。いい場面はいくらでも観た。だけど決める選手がいなかった。マルコスの元へ集まるサンフレッチェの選手達。揃ってのカメハメ派のパフォーマンスを観た時、ああ、本当にマルコスはサンフレッチェの選手になったんだなと感慨深くなるのだった。

 これで勝ち越した。このまま引き離そう。そんな機運が盛り上がってた中、川崎はジリジリと攻勢を強めてきた。何度か決定的なシュートを放たれながらもGK大迫の好セーブに救われている。ここは踏ん張らないといけない。が、脇坂の逆を突く動きに完全に外されてしまいサイドチェンジをされてしまう。ガラ空きになった左サイド。慌てて左に寄せるもゴール前へ入れられる。そこへのマークは間に合ったもののヒールで落とすと後ろから入った山根のシュート。グラウンダーでゴールの隅にきっちりと流し込んでしまったのだった。

 また追いつかれた。

 なんでこのチームはこういうことをいとも簡単にやってのけるんだろう。ただ、逆サイドでフリーの選手に渡した時点でその危険は感じられた。最初の失点も右サイドの裏へフリーでもたれたところからだった。そういうフリーの選手を作ると必ず仕留めることができる。逆に言うとそういう状況を作ってはいけないのだった。

 それだけに終盤に向けて攻勢に出るサンフレッチェもカウンターだけは気をつけないといけなかった。押し込んでいるようでクリアボールを繋がれると簡単にゴール前まで持って来られる。特にマルシーニョに渡るとスピードで一気にゴール前まで持っていかれる。こういう選手が途中から出てくる川崎はやはり選手層も厚い。ここまできたからには失点だけはしたくない。両者勝ち越しを狙ってはいるものの守備の粘りも強くこう着状態に。いや、むしろ川崎の方がゴールに近づいているような印象すらあり、アディショナルタイム7分の表示にこのままドローで終わるのが無難なような気もした。

 GK大迫からのキックは相手DFにクリアされ繋げられるも途中出場越道が奪う。右サイドから斜めのピッチを切り裂くようなパスの先にはマルコスが。ワンタッチで裏へ出す。そこへ飛び出した満田。DFの追走を受けながらゴール目指して走る、走る、走る。前へ出るGK。距離がありながらも打つ。反応するGK。が、次の瞬間にはファーのネットにボールが収まっているのだった。

 決まった、決まった、決まった。ここで決めた。90分走り回った満田が決めた。そしてこのラストパスを送ったのはマルコス。早速試合を決定づける働きをした。正直なところマリノスでは途中出場が多く過度な期待はすべきじゃないと思ってたとこもあったがそんなことはなかった。素晴らしい、素晴らしき活躍。チームの中では小柄でありながらもその存在は大きく異彩を放つのだった。

 残り時間わずか。相手のロングキックを跳ね返しラインを割るとタイムアップの笛が鳴った。勝った。勝てた。川崎に9戦ぶりの勝利である。満田が戻ってきたことによりチームが前向きになり加藤のような前線で粘りとフィニッシュへの姿勢は活性化された。そこへピエロスがストライカーとしての牙を研ぎ澄ましマルコスが潤滑油となりつつも自らもフィニッシュへ繋げる。凄い、こんなにワクワクしたのはいつ以来だろうか。つい2試合前までの絶望感が嘘のように見違えてしまったのだった。

 早く次の試合が観たい。このチームの活況は中野や越道のような若手にもいい影響を与えるに違いない。今度はそういう選手が活躍するのを観たい。そんないい循環に入っていくことを予感させる勝利なのだった。

«浦和戦~得点力不足を打破した2発

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  • ロクサーヌ
    Police: ロクサーヌ
     これが売春婦に関する歌だと知ったのはずっと後のこと。歌詞も分からずずっとこの曲を聴いていた。勿論歌詞を知ってからもこの曲は大好きな曲だけど。  本当かどうか知らないけどこの曲の入ってるファースト・アルバムはわざと下手に演奏したらしい。理由は当時パンク・ニュー・ウェーブのブームの中でスタイルを合わせたということだろう。そしてセカンド・アルバムでは実力に見合った演奏で上手くなったと思わせたらしい。そういわれてみるとファーストでは音数が少ないシンプルな曲が多いような気がする。このバンド、5作しかアルバムがないのだがそういう抜け目なさというのは元から持ってたようだ。5作とも素晴らしく駄作のないバンドだった。 (★★★★★)

ぼくのブック・ライフ

  • トニー・サンチェス: 悪魔を憐れむ歌
    ローリング・ストーンズの暴露本である。現在は改題され『夜をぶっとばせ』になってるがタイトルといいブックカバーといい前の方がシックリしていた。 ストーンズというのはぼくが最も影響を受けたバンドの内の一つだが、ここまで無茶苦茶をやってそしてそれが逆に彼らのダークなイメージにつながった。まさにロック・バンドの典型である。どんなに悪ぶっても彼らのようにはなれないし彼らのような影響力は出せないだろう。 時代をロックと女とクスリと共に駆け巡り気付けば巨大産業に飲み込まれていったストーンズ。作者はそんなストーンズに最後は身も心もすり減らされてしまったらしい。それでも未だに活動しているストーンズはある意味怪物だ。 ぼくとしてはこの本の訳者中江昌彦の翻訳もその場に居合わせたような感覚になるのが良かった。他にも『レス・ダン・ゼロ』などもいい雰囲気を出してた。今まで本なんか読んだこともなかったぼくが高校生の時読んで凄いショックを受けたのをよく覚えてる。当時のブックカバーの最後に「END]という文字が書かれてたが読後その文字が見た目以上に大きく見えたものだ。 (★★★★★)
  • 落合信彦: 第四帝国
     まず最初に断っておこう。これはトンデモ本である。ここに書かれてる内容は根も葉もないことと言っていい。そもそもこの落合信彦という人がゴースト・ライターを使ってマトモに取材してるかどうか怪しい。本人いわくCIAに100人も友人がいるというから情報には事欠かないということらしいがこれではアメリカ政府のトップシークレットがなぜか来るというUFO研究者と言ってることが変わらない。そういえばUFOに関しての記述もこの本ではありオリジナルな展開を見せてるのは興味深かった。  内容はナチス・ドイツの残党が世界各地で暗躍してるというものでヒトラーは生きてる、UFOは実はナチスが造ったというファンタジーが溢れてる。その展開はちょっとしたSFといっていい。  事の真実なんてどうでもいい。ただ単純にエンターテイメントとして読めば何の問題もないだろう。誰も「ゴルゴ13」を読んで事実と違うと言わないだろう。それと同じことだ。  しかしこの人、いかにも事実というように書くのが上手い。文章も簡単でスラスラと読めるので展開のテンポがいいのである。だから知らないうちに読んでしまってるという感じになる。そのスタイルはぼくもずいぶんと参考にさせてもらった。  まあ実際はゴースト・ライターなんだが。 (★★★)
  • ニック・ホーンビィ: ぼくのプレミア・ライフ
     このブログの元ネタとなった本。この本との出合いはサンフレッチェの応援仲間に渡されたことだ。その存在は知ってたものの読む機会がなかったのでありがたかった。  内容はというとアーセナルを応援する著者のその観戦生活といったとこだがこれを読むと結構日本のサポーターもプレミアのサポーターも変わらないとこがあるのがわかる。退屈な、退屈なアーセナルというタイトルには笑ってしまった。なぜなら分かり過ぎるくらい分かる心情だからだ。ぼくもサンフレッチェを応援してて何度同じことを感じただろう。  今やアーセナルはプレミア・リーグでも優勝しチャンピオンズ・リーグでも決勝に進出するような存在。一方ぼくの応援するサンフレッチェ広島はJリーグの1部リーグで常に降格の危機を感じるクラブ。でもその根っこは同じである。海外サッカー好きにはJリーグをバカにする傾向があるがそういう人には分からない内容かもしれない。 (★★★★★)

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  • Jリーグ2010特命PR部員 Miles